大雪山

理香の担当看護婦の森さんが、他の患者さんの相手をしていた。

そんな会話を聞きながら、
病室の外で順番を待ちながら、なんとはなしに考えた。

「森さんてすごいわ」

あたしなんかだったら、絶対キレてる。
なのに、なんであんなに感じよく応対しているんだろう。

分かるよ。
そりゃあ仕事っていうのもあるだろう。
それに、別に喧嘩を売られている訳じゃない。

でもね、
例えば、採血をしなきゃならない患者さんが入って来て、
「あたし、血を抜くの大変なのよ〜。
あなたに出来るかしら。
・・・なーんておどしたりして。」

なーんて森さんに言ってるのを聞いてしまったりすると、

「・・・はあっ？！
別に採血が出来なくても、あたしは痛くも痒くもないんですけれど。
つか、それ、なんの冗談っすか？
自分、もしかして面白いつもりでいってます？」

なんて、辛辣に答えたくなっちゃう訳なんですよ。
心の狭いあたしとしたら。
（ごめんなさい）

それを、にっこにっこと応対している森さんって、
・・・なんて出来た人だろう。
キレる事ってないんだろうか？！

森さんにあとで病室に入った時にこの事を話してみた。

そしたらね。

「それは藤咲さんだって同じでしょー」
って言われた。

確かに、考えてみれば、
イベント会場で明らかに盗撮してるなこいつ！と思っても、
別に怒ったりはしないし、
にこにこと慇懃無礼に対応していたりする。

「それが、私たちにしてみたら、
患者さんのうんちのお世話をしているのと同じことよー」

・・・って、全然それは違うと思うんですけれどっ☆！！！

まあ、それはともかくとして。

看護婦っていうのは、つくづく、
なりたい人がなれるというものではないんだな、と感じてしまった。
なりたいとかそういうこと以前に、
やっぱり「資質」っていうのが重要なんだろう。

あたしなんかが、いくら「白衣の天使になりたいの〜」と言ったとしても、
所詮、いいとこコスプレ程度しか出来ないのは、
多分資質の問題なんだろう。

・・・ああ、でも、それにしても。

人のふり見て我がふり直せ。
やっぱり、心は大きく持たなきゃね。

そんな事を感じた今日この頃でした。