わたし、アメリカのこういうところが好き。

単純すぎると思う人もいるだろう。
でもこれって素敵な話じゃない？！

遺族の方の気持ちもあるだろうと、きっと日本の人は思うだろう。
けれど、わたしが遺族ならば、きっと彼女に感謝する。

だって、殺した人間を赦すっていうのは、
キリスト様の黄金律「隣人を愛せよ」の最も尊い形ですもの。
私を殺した人間を赦す、というのが聖人の行いならば、
私の最も愛するもの（家族）を殺した人を赦し、
彼の地上で過ちを犯した魂を天国に入れるように祈ってあげるという行為は、
同じく聖人の行い。
私がそれをすることによって、殺されたあの子も救われるし、
自分自身の魂まで浄化される。

そんなことに気づかせてくれた彼女の行為は、
感謝を持って受け入れられるだろう。
教会でお説教のテーマに使われてもいいぐらいだ。
あたしが神父様なら絶対そうする。

そもそも、死んでしまった魂は、もう何も出来ないんだ。
という考え方がキリスト教（カトリック）にはあるのね。
だから、死んじゃった後に、いろんなもんが見えて、
「げ☆。あたしは今までなんてことをしてきたんだ！」とか、
「今からでもなんとかしたい！」なんて思ったとしても、
もう手遅れなのね。

地上の生きている人間の祈りだけが、
もうどうにもならない魂の救いになるの。

だから、雙葉では、「死者の為の週間」というものがあって、
朝のお祈りも「死んでしまった人たちの為に祈る祈り」になったりするのね。

余談ながら。
死んでしまった人（例えば伯爵とか王様とか）がいて、
たまたま旅人かなんかが、通りかかって、
「そうかこの町で伯爵が死んだのか。それはかわいそうに。
ではこのお金でごミサをあげてあげてください」
などと、たまたま条件反射的に司祭に金貨（銀貨？銅貨？）を渡して頼んだら、
その夜「あなたがミサをあげてくれたお陰で、天国に入れた」
などと言って伯爵の幽霊が出て来たりする物語があったりします。
大抵その後に「実は、死ぬ前にここそこに宝物を隠しておいたのだ。」という感じで、
お礼に宝物のありかを教えてくれたり、
或いはその幽霊に知恵をつけてもらって、難問を解決したりして
それで大金持ちになったりとか、
なんかそんなエンディングで終わる感じ。
まあ、民話なんて、ゲンキンなものですから。
バージョンは違うけれど、こんな感じの話はヨーロッパに散在してます。

まあ、だから、死者にとっての祈りっていうのは、
生きている人間がご飯を食べるように、必要な事なのです。
という認識が、欧米にはあったりするのです。

だから、３３個目の石っていうのが意味があったりするのね。
日本だと「１個石が多い！いたずらか？！」になっちゃうかもしれないし、
増やした意義なんて理解してもらえなさそうだけれど。

でも、いい話だぁ。

「容疑者を悼んでいる人がいる」っていうのは、
本当に、人間の「性善説」を信じられる瞬間だな。

ま、祈ったからとて、
それで、民話のように容疑者が幽霊になって現れて
宝の在処を教えてくれるとは思えないですが☆。

というか、天国に入らないと死者は幽霊として出て来れないことになってますから。
死者は、まず煉獄にいって、罪を清めないと天国に入れないのね。
煉獄では、何をするかと言うと、燃え盛る焔で清められるのよ。
しかも、確か何十年何百年、何千年単位だったような気がする。
チョ容疑者は、３２人も殺してるから、ちょっとやそっとの祈りじゃあ無理だね。
１万年間焔で焼かれる刑が、１００年やそこら縮まっても、ねえ。
というか、もしも彼が地獄にいってしまっていたら、もう祈りすら通じないし。
カトリック的には地獄に行ったら、祈っても無駄なのね。
もう絶対に出る事は出来ないから。

（01st June.07)