この世界で・・・

あたしの名はマリアだよ。

あたしに救いを求めて来ている人を、どうして拒絶できるの？

みんな苦しんでいるんだよ。
神様がお作りになった、この理不尽な秩序に。

自分なりに描いていた夢だってあったかもしれない。
けれど、誰もがその鉱脈を発見できる訳ではない。
思い描いていたよりも、はるかにつまんない人生。
しかも、「夢幻のごとくなり」なんていう言葉が身にしみるほど、
つかの間の短い命。

そんな目に見えない切迫感の中で、
きっとみんな救いを求めているんだよ。

あたしが、人生のスパイスになれればいいのにね。
ほんのひとひらのベイリーブスが、
スープの味をぐっと変えてしまうような、勝利の月桂樹。

悶々と悪い気に苛まれた人たちを
あたしは両手を開いて受け入れてあげたいの。

大丈夫。
悪い気なんかに犯されたりなんかしないから。
あたしは、浄化することができる人だから。

・・・そうだね。
確かに「我が身を削って」、ではあるんだけれどね。

でもね。

こんな寂しい世界なんだもの。
あたしなんかでいやされるものだったら、いやしてあげたい。
あたしが幸福の種を撒けるのだったら、撒いてあげたい。

たとえそれが長い宇宙の中で、
今という時代に生きるほんのわずかな人間の一時の助けになるということだけでも。
それは十分意味があることなんじゃないのかな。

（22th Jan '07)