赤い花
そうなんだよね。
どうして隣の花は赤く見えるんだろう。
例えば、相方と二人でいたとする。
男の人が、相方をロックオンしたらしく、
ひたすら彼女に話しかけて、彼女に名刺を渡している。
そういうときには、半ば諦めにも似たような気持ちが襲ってくる。
「ま、彼女はほんとにカワイイからねえ。
男がことごとく、みんな彼女の魅力に釘付けになるってすごいな。
あたしはホント、つくづくイケテナイからなぁ。
いつも男にももてないよねえ。」
別に男にもてたいというわけでもないんだけれど。
けれど、なんとなく、自分が超地味キャラになった気がして、
すごく自信喪失するんだ。
やっぱりキャンギャルとしてどうなんだろうって。
このお仕事をしてるってことは、
異性をひきつける魅力に溢れる人っていうのがやっぱり必須条件なんじゃないの？
だとしたらあたしはキャンギャル失格かもね。
男ウケするキャラじゃないもの。
っていうか、どっちかというと、女の子達にもてるんだもの・・・。
うーん。
なんとなく落ち込んだのと、
それから、ちょっとこのまま放置しておくと仕事上面倒なことになると困るので、
後から電話で昔からの友達とこの件について話をしていた。
その時に、何気ない会話からいろんな事を知ることになる。
今、理香の相方に声をかけている男性が、
実は何年か前、理香がその人を知る以前に、
理香の友達に電話をかけて
「藤咲理香ってどういう子？」などと聞いていたということ。
まあそれは仕事のカラミもあっての話なんだけれど。
つまり、理香の事を、理香が考える以上に既にその人が知っていたということ。
同じギョウカイにたくさん知り合いがいることも知ってるし、
その中には結構強い人が何人もいることも知っている。
キャンギャルなどの友達がめっちゃくちゃ多いことも。
そして今理香が話しているこの彼女と仲が良いことも。
そして、この彼女は、彼の仕事上の重要な繋がりを持つ人と仲が良いことも。
うーん。そうか。
あたしはその男性の事を、全然知らなかったよ。
名前すらつい最近知ったばかりだっていうのにね。
だから勝手にその人もあたしのことを何も知らないと思いこんでいたよ。
「・・・だから、彼は、この子に手を出したらやばいと思ったんじゃん？
それで、新人に声かけたんじゃないの？」
その友達の言葉で一気に曇っていた気分が晴れた。
なんだ。そうか。そうだったのか。
だったら、今回の事に関しては、自分が魅力がないとか、
そんな風に判断する材料にはならないわけだ。
そして気が付いた。
そういえば、以前、あるチームのレースクイーンを三人でやっていたとき。
なぜか理香だけがやたらとあるレーサーさんに声をかけられたのだった。
声をかけられたときに、適当に話を合わせていたのが、
なんとなく理香のノリが彼的にヒットしたんじゃないのかな。
そこで、夜、飲もうよって結構声をかけられたんだけれど、
なんとなーく誤魔化して逃げてしまったのね。
まあそのレーサーさんが結構遊び人風だったのも警戒したし、
普段からうちのチームにいるレーサーさんじゃなくて、
たまたまこのレースだけ、このお祭りにだけ来ている人だからね。
普段からうちにいるようなレーサーさんなら、
クライアントさんとかチームが怖いから変なことはしないだろうけれど、
今回一回の人なら、そういう束縛もなさそうだから、はじけてそうじゃん？
どうせ理香の連絡先なんかわかんないだろうし。
それに、理香、他のキャンギャルと相部屋だったから安心よね。
マネージャー（女性）もみんなで一緒に行動していたら、
一人だけ無理矢理誘われるってこともないだろう、と、極力くっついていた。
その時は自分が誘われるのがすごくいやだったの。
「あたしってよっぽど声がかけやすそうなのかな」
「そんなに軽く見えるのかしら？」
「あとの二人はちゃんとした事務所の子だから声がかけられないのかな」
「どうせあたしはフリーだし。たいしたことがない子だよね」
そんな風に考えて落ち込んだ。
・・・ってさぁ。
声かけられても落ち込んで、かけられなくても落ち込むんじゃん！！！
なにやってんだ、あたし。
結局、無い物ねだりなんじゃないの？
ばっかみたい☆。
もっと自分に自信をもっていかないとね。
あたしの一番の欠点は、何をやっても自信がないこと。
自分がだれよりも赤い花を持ってるって、信じなくちゃ。
（10th Sept. 2006)
