タナトス

病気になるたびに、
「お前は生きていてはいけない」と言われているような気がしてならない。

あっちが痛み、こっちが痛み、
普通に、つらいのだけれど。
治ったかと思うと、またぶり返す、虚弱なあたし。
なんだか、生きていること自体を自然から拒否されているような気がする。

ちょっと昔だったら、
こんなに医療だって発達していなかったでしょ？
そうしたら、あたしなんか、
もっともっと昔に死んでいたに違いない。

そういえば、昔は結婚の年齢とか低かったんだよね。
源氏物語の世界なんかをみていると、
１２歳とか１４歳とかで結婚したりしていたんだよね。

この気持ちは分かるよ。
それは、「死」への恐怖が常につきまとっていたからでしょ？
今だったら、ナンの不自由もないような病気ですら、
ちょっと昔だったら、ダイモンダイ。
「悪いところをちゃっちゃと取っちゃいましょう」ってワケにもいかず、
良い薬があるわけでもない。

あたしだって、一昔前だったら、
１０代の終わり頃には、間違いなく死んでいたはず。
あの病気の緊急手術だって、あの事故の輸血だって出来なかったはず。
ということは、あたしは既に３度ぐらい命拾いしてる計算になるはず。

そんな恐怖があるんだとしたら、
やっぱりさっさと結婚して子供産んでおかなくてはって思うよね。
人間生まれてきたからには、子孫を残さなくては種の存続に関わる。
年齢が行けば行くほど死ぬリスクが高くなるんだったら、
死ぬ前にちゃっちゃと結婚させないと。
生理が始まったらもう子供が産めるってことだから、
その頃には結婚して子供産まなきゃならないというのも分かる。
だから結婚年齢が低かったんだろう。

まあ現代社会だから許されるようなものなんだろうけれど、
というか現代では、ヤンキーさんとかじゃない限りみんなそんなもんだけれど、
生理が始まっても結婚もせず、こんな年齢まで子供もいないっていうのは、
やっぱり自然としては許せないのかな。

こんな虚弱なあたしが今、ここまで生きていられるのは、
ひとえに医療技術の進歩のお陰。

ありがとう、と言うべきなのか。

それでも存在を自然界から拒否されているような、
そんな冷たさを感じて、寂しくなる。悲しくなる。