細胞

あるひ、突然気がついた。

あたし達が、普段生活しているだけで、
ただ、単に生き延びているというだけで、
たくさんのモノを殺していると言うことを。

生きるために、イキモノの肉を食べる。
野菜を食べる。
そんなは話じゃあない。

動く度に、微生物を潰していたり、
気がつかないうちに蟻さんを踏んづけちゃったり、
蚊に喰われて、ぴしゃっとやっつけちゃったり、
そんな話でもない。

「肌のターンオーバーは２８日」なんていうけれど、
２８日も経つと、もう肌は同じ細胞で構成されていないってことじゃん。

お風呂に入ってみる。
歯を磨いたり、うがいをしてみる。
エステなんかにいってみる。

こうしているまにも、たくさんの古い細胞達が、
私のボディーを守るために死んでゆく。

私

私ってなんだろう？

思考しているこのあたし。
あたしのこの自我は一緒なのに。

これを守るために、同じ細胞でありながら、
どんどん死んでくれる何万、何億の同胞がいる。

もしも、これを集めたら、
そっくり私と全く同じモノが出来上がるかも知れない。
いや、出来上がるな。
しかも何体も。何十体も。何千体も。

思考している脳細胞も、
一度出来たら後は減る一方という話だったけれど、
最近の研究ではどうやら違うらしい。
アポトーシスと、そして新しい接続をくり返している。

想像の世界だけれど、
ばらばらに散ってしまったあたしの細胞。
これを集めてみたい。
ほら、息をしていないあたしが横たわっているのが見えるでしょ？

あたしは、この「あたし」のかわりに、今生きている。
何億の、何千億の、いや、星の数ほどの細胞達が、
自分たちの命を、私の維持の為に捧げてくれる。

ありがとう。

そう思ったら、生きられるよね。

（24th Nov.06)