母の日

留守電にメッセージが入っていた。
登録もしてないし見たこともない番号だった。
またアヤシイ電話かもしれないが、
まあ、留守電入れてるってことは違うだろうな。

とりあえず、早速、聞いてみた。

「・・・さきちゃん、今日はありがとう。かわいいの。
おかあさんぐっと若く見えるかも、あれだったら。ありがとうね。
また遊びに・・・写真撮れたらまた遊びに来てくださいね。
ありがとう。」

・・・って。
母の日じゃんか☆！

頭の中でまとめると、要するに、
私の携帯番号と似た携帯番号の女の子で「さきちゃん」という女性がいて、
お母様に何か母の日のプレゼントを贈った、と。
内容から推察するに、恐らく、衣類。
まあ、ご年配の女性という事から推察するに、
恐らく、カーディガンとか、羽織モノとか、そういう系？
しかも「若く見えるから」ってことは、
ちょっと明るめの色のものを送ったんだろう。

そして、お母様は、携帯番号を間違えて、
理香の電話にお礼を入れている。

着信履歴が、０７，で始まっているので、
大阪が０６だから、恐らく広島とか四国とか、
日本地図で言うとあっちの方なんじゃないだろうか。

３秒考える。

そして、かけなおしてみる。

だって、ここで黙っていたら、人でなしでしょ？
せっかく母の日に贈り物をした娘さんにお礼が伝わってなかったら、
「ママに送ったのに！」って気を悪くするかも知れない。
或いは「気に入らなかったのかも知れない」と気をもんでしまうかもしれない。

「また遊びに来てね」っていういい方からすると、
多分娘さんは既にご結婚なさっておうちをでているんだろう。
そんな頻繁に出入りしてない間柄なんだろうな。

こりゃ、まずい。

・・・・。

暫く、発信音がなって、漸く諦めかけたころ、やっと受話器が取られた。
「・・・もしもし？」

う。やばい。男性の声だ☆。
理香はてっきり「お母様」が電話にでてくれると思ったんだけれど、
これはちょっと話がややこしくなるぞ・・・。

「あ、あの、すみません。
えっとですねえ、多分、お母様だと思われるんですが、
私の携帯電話に電話が入ったのですよ・・・。」

と、説明の方もどう説明して良いのやら分からなくてしどろもどろ。
男性も、いきなり知らない女の人からかかってきて、ちょっと疑いモード。
ナニゲに相づちも、ちょっとコワモテ系というか、
ちょっとキツイカンジの声になってるよ、おじさん！

・・・っていうか、理香のこと、オレオレ詐欺とかソレ系だと思っていません？！
というか、「お母様」という意外、どういったらいいんだヨ☆？
あたしのお母様じゃないし、全然関係ない人なんだけれどさー、
でも、他に言いようがないじゃんか・・・。

「あの、ですねえ、多分さきさんという娘さんにあてたモノだと思うんですが、
多分、娘さんが母の日にプレゼント何かしたみたいで・・・。
で、お母様が間違えて、私の携帯の留守電にお礼のメッセージを入れていたので、
とりあえずお電話しました。」

かなり焦ってしまったのでイマイチわかんないけれど、
なんとかそんなような事をしどろもどろに伝えると・・・。

突然相手の態度が柔らかくなった！

「あ、そーですかぁ！どーもどーも。そりゃーすいませんですー！！
わざわざありがとうございますー！」

途端にへにゃっと理香の肩の荷がおりた。
ふー。

あとはどう切ったのか覚えてないけれど、
用件さえ伝わればもういいので、とりあえず、失礼させていただいた。

・・・良かった。
突然切られたりしたらどうしようかと思ったよ☆。
っていうか、アヤシイ電話だったら理香なら即切るんで、
相手が聞いてくれる人でよかったよ！

切られたりしたら、きっと向こうも不審だろうけれど、
こっちも「げ☆。あたし親切だったのに！」と、
大いに気分を害してとげとげした気分になっていただろう。
お互いのために、本当に良かった♪

０７ってことは、東京でも大阪でも名古屋でもないから、
大都市じゃなくて、田舎のひとだから、きっと性格がいいんだろう。
良かった！
それしか言うことはないけれど、とにかく良かった！

というか、こういう「聞いてくれる人」ってもしかしたら騙されやすいかもしれないから
大丈夫かしら？
などと、親しみを感じたついでに心配しちゃったりして。

それにしても、今日という日、
いったいどれだけの優しい心が日本中を、いや世界を飛び回ったのだろう？
今日はきっと、サンタさんの日。
世界中が優しくなれる日。

・・・母の日って、いいね。

（14th May. 2006)