種

あたしたちは、みんな心の中に種を持っている。

けれど、その種は、とても固い殻を持っているの。

例えば・・・。
クリスマスの夜、クルミ割りを使って中身を取り出しながら、
どうやってこんなモンが芽吹くのか、いぶかしく不思議に思うような。
そんな種。

そして、あたしたちの種は、目に見えないから、
そんなものがあるなんてことに殆どの人が気付かないの。

種の芽吹きは劇的。

たっぷりとした水に出逢うこと。
その水を吸わせてあげることで、奇跡のような美しい芽吹きを始める。

芽は伸び、
天に向かってかいなを広げるように葉を広げ、
そして、おおきな木になる。

そこから言葉はあふれ出す。
物語を紡ぎ出す。

まるで今までの沈黙が嘘のように、雄弁な声となって語り出す。
生き生きとした力となって、私の中にみなぎっていく。

人はみんな、手に水差しを持っている。

希に、自分一人で完結出来る、両性具有のような人もいる。
自分の種に自分で水をやって芽を伸ばす人。

水は、適正があるんだろうな。
全ての種に効く水なんてないんだから。
エリクサーみたいなものなんだろうか。

私の種が、あなたという知性に触れて言葉があふれ出す。
注いでくれた水に感謝をしよう。

（09th May. 2006)