いい女

ひっぱったってしょうがないジャン。

ま、世界はなるようになるんだし。
逆言ったら、ならないようにしかならないのさ。

最後の最後に、私の所に戻ってくればいいのよ。
だって、私はあなたにとってとっても都合がいいもの。

あなたの裏切りにも目をつぶっていてあげる。
全部知りながら微笑んでいてあげる。

探ったりなんかしないよ。
自分の気分が悪くなることだからね。
それに、何も出てこなかったら、自分自身が自己嫌悪に陥るし、
何か出てきたら、多分我慢が出来なくなってしまうし、
貴方自身も傷つくでしょ？
だから、敢えて探らない。

冗談になる範囲外の意地悪だってしないよ。
でも、まったく何もないのはつまらないから、
一応、一言二言はごねてあげる。

放置していていいよ。
別に私、浮気なんかしないから。

人は私を「いい女」だっていう。

けど私は自分がいい女なんかじゃないってことがよく分かっているよ。

あたしはプライドが高いだけ。
引き留めたって自分が惨めになるだけでしょ？
それで立ち止まられても、
パワーバランスが逆転するのにそのうち自分が我慢出来なくなってしまう。
そして、逃げるモノを追ったって、追われれば益々逃げたくなるものじゃん？
逃げてしまったら、自分自身が死にたいほど絶望してしまうから。
それが耐えられないから、黙って平気なフリしてる。

頭でっかちな大人。
全て、脳の中の世界で演算処理を完結してる。
実際にケースを実行することもなく、計算結果だけが積み上がっていく。

沢山の仮定。
沢山の、想定出来る答え。
そんなものが、私の自由を縛っていく。

だから、私は身動きも出来ずに笑っているの。
まるで、身動きをしたくないかのように振る舞って。
女王のように、構えていられるの。
女王のように、構えざるを得ないの。

人は近くなると傷つけ合ってしまうものだから、わざと距離をおいているの。
壊したくないんだよ。この関係を。
これが私の愛情。
悲しいほどによそよそしい愛情。

いつか、あなたが、頭を垂れて私の所に戻ってくるのを待っている。

世界は厳しいし、物事は思うようにいかないものでしょ？
あなただってそのうち分かるはず。
そして、私は永遠に薫り高く美味な果実。
飢えて渇いて、凍えきって、私の所に戻ってくる。
自分の残してきた後ろにある楽園を思い出さざるを得なくなってね。

欲しいモノをあげるよ。
いい子にしていたらね。

だから。
もし、離れていきたいんだったら、離れていけばいい。
私は、ここで待っていてあげるから。

（06th May. 2006)