一番の秘訣

怒らないこと。
それは素晴らしい事だと思った。
そして、それこそが一番の秘訣だと思った。

約束してあったのに、すっぽかされた。

ほんとマジありえないんだから！
っていうか、あたしだってそれなりに忙しい人なんだよね。
わざわざあなたの為に時間を作ったのに、
よくそんなことが出来るよね。

と、ここで嫌みの一つも二つも言いたくなるのが普通だよね。

「ふざけろ！」
なんて言ったら角が立つのは目に見えています。
なんていっても、相手は仕事関係なんだし、怒らせたくはない。
そこで、ちょっと思案して、
「んもー、カンベンしてくださいよぉ〜(^○^)」
などと言ってみたりする。

けど、これは通じる相手と通じない相手がいるので気を付けた方が良い。
下手をするとメチャ相手の機嫌を損ねることにもなりかねない。

「こっちだって仕事があるんだからしょうがないだろ」
という気持ちにもなるよねえ。
しかも向こうからしてみたら、「仕事をあげている」ワケだし。
こっちは「頂いている」ワケだし。

勿論、仕事だろうが商売だろうが、
お互いにフィフティーフィフティーだと思いますよ。
「仕事やってる」とか「商品を買ってやってる」なんて態度だったら、
いくらクライアントでもまっぴらです。
まあ理香に限らないと思うけれど、この商売の子達は気位も高いので、
「そこまでして、別に仕事なんかいらないもん！」
という風になってしまいます。

ただ、そうはいっても、
完全なフィフティーフィフティーじゃあないってこと。
裏側の、目に見えないところでは、厳然としてあるんだよね。
そして、それを理解してない子は、お馬鹿さんだと思う。

嫌みの他に、もう一つやりたくなるのは、愚痴。

愚痴というか・・・。
自分がどれだけ大変な思いをしているのかということを、
相手に分かって欲しくて、喋りたくなる事。

でもこれだって、別に言わなくていいこと。

言って満足するのは自分のちっぽけな自尊心だけだし、
（まあその自尊心が一番大事なんて人もいますが）
言っても、相手は負担を感じるだけ。

「そっか、そんなに苦労して時間を作ってくれたんだ。
そりゃあ申し訳ないね」
と思うかも知れないけれど、
それは自分が思う方向とは違う方向に流れる可能性が高い。

自分としては、「ごめんね。次からはちゃんとするからね」
という流れを期待しているのかも知れないけれど、
或いはこのことで「貸し１」を作りたいのかも知れないけれど、
そうは問屋が卸さない。
向こうだって「借り」なんて作りたくないからね。
「そんなめんどくさいならもういいや」
「なんだかうざいなー」
という流れになってしまうのがオチ。

だったら、何よりも自分の得のために、黙ってニコニコしていた方がいい。

逆にその方が相手の心をつくものだと思う。

こっちだって、「あっ！ごめん！！」って思ったときに、
相手から責められたらどう思いますか？
「知らん！」ってつい言いたくなるよね。
そしてまた、「あっ！ごめん！！」って思ったときに、
恨み節をぐちぐち言われてしまったら？
「弱ったなぁ、こいつはめんどくさいから避けよう」って思うよね。
逆に、「あっ！ごめん！！」って思ったときに、
「あ、いいよ〜。あたしもその方が都合よかったんだぁ。気にしないでネ。」
なんて言ってもらった日にはどう思いますか？

実は、理香の友達にそういう子がいるんだよね。
あんまりにもいい子なんで、ホント理香が迷惑かけっぱなしで、
いつも「申し訳ないなあ」と逆に思って、彼女を気遣ってしまう。
不思議とそういう心理になってしまう。

みんなも知ってるよね。
理香のミクシサイトを運営してくれている管理人、
りりちゃん（Ria）っていうこなんだけれどね。

アレは才能だよね。

逆に、変なヤツに捕まったら、
彼女のそのなんでも受け入れてしまう性格から考えて、
利用されたりヒドイ目にあうんじゃないかと思うと、
別に頼まれてもいないのに「助けなきゃ！」と自然と思ってしまう。

だって、どんな事をしても、「いいよ〜」って笑って赦してくれたら、
心のある人は、当然、ちゃんと「申し訳ない」と思っているだろうけれど、
心のない人は、「あっそうなんだ」って何とも思わないだろう。
逆に、「彼女って都合がいい子」なんて思う人もいるかもしれない。
いかんいかん。

そういえば、昔話で、日本でも中国でも、
釣りをやっているおじいちゃんが、実は高名な兵法家だった、とか、
畑を耕している農民っぽい人が、実は凄腕の剣豪だった、とか、
そういう話があるよね？
彼女の場合はまさにそんなカンジかな。

いつもにこにこしていて、何をしてもまーったく怒らない。
人によっては「利用しやすそう」って思いそう。
或いは、こう言ったら誤解招くかもしれないけれど、
すごくスキが多そうに見えるんだよね。

けど、彼女は、この類い希なる素質で、絶対不幸にならないだろうな。
だって、世界には心ないひとたちばかりいるわけじゃないから。
（まあ付き合う人間の種類にもよるかもしれないけれど・・・。）
そして、心のある人が彼女を見たら、手放さないだろう。
そうして彼女は永遠に守られるだろうな。

大切に、大切に、ね。

（21th Mar. 2006)