雨が降ると、おなかがすくのは理香だけでしょうか？

雨の日は、なんだかさびしい。

音すらも、雨粒のはじける音に阻まれて、
傘の周り、ぐるり閉じこめられてしまう。

得体のしれないものが喜んで飛び出てくる。
かえるさんだとか、なめくじさんだとか、
ぬめぬめぬらぬらした、いろんなイキモノ。
羊歯（しだ）とか、苔とか、黴とか、
ちょっと変わった植物。

それに、幽霊さんとか。
湿気は、陰湿な気をもたらしてくる。

日本という湿度の高い国にいるからこそ、
美しくきめ細やかな肌でいられるんだろうけれど。
もしかしたら、昔話や鏡花の世界のように、
フォーカスがかかるからこそ美しいのかもしれないね。

でも、雨は嫌い。

誰か側にいて欲しいような、そんな気持ちになる。

雨に濡れるのは嫌い。
なんだかとてもみじめな気分になるから。
冷たくて、寒くて、吐く息まで凍えそうになるから。

きっと、体の中がからっぽになっちゃったんだよ。

だからその隙間を埋めないと。
たくさんのあったかいもので。

ともだちだとか、愛情だとか、
あったかいスウプだとか、紅茶だとか。

甘いもので埋めないと。
キャラメルマフィンだとか、フィナンシェだとか。
でも、冷たいものは嫌い。
プリンとかシュークリームよりも、
焼き菓子が欲しい。

はやく埋めないと。
本当に空っぽになっちゃう前に。