For poor Cock Robin.
お線香の煙しか食べることが出来ないんでしょ？
死んでしまった人は。
だったら、お焼香だっててんこ盛りにしてあげたいし、
お線香だって、何百本でも、何千本でも、買ってきて、
ローストチキンが出来るぐらいの煙をだしてあげる。
もしかして、あたしって、結構下品なコト言ってるのかな。
あたしの大好きな薔薇のお香を買ってきてあげる。
理香のおうちで、一杯焚いてあげる。
・・・でも、もしかしたらこれって有効じゃないのかな。
いわゆる「お線香」っていうヤツじゃないと、食べられないのかな？
しきたりってやだね。
なんだか、やだね。
おなかが一杯になっちゃうと、
浮遊霊にでもなっちゃうっていうのかしら。
仏教のしきたりをしらないから、
どうしていいのかわかんないけれど。
でも、何かしたくて。
けど、きっとあたしは、
またよかれと思って間違いを犯しちゃうんだろうな。
我慢しなきゃ。
おじいちゃまの為に。
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何か、足りないのならば、
神さま、あたしの流す涙であがなってください。
贖罪の子羊や、ハトにはなれなくても。
涙にその力があるって信じたい。
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「午後の方は、焼き上がりの時間が早くなることが多いです。
午前に焼いているので、釜があったまっていますので・・・。」
って、朝ご飯に食べた、トーストの話じゃないんだから！
・・・でも他人にしてみたら、そんなものなんだろうな。
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火葬場で働いている人が、みんなマスクをしている。
花粉症用、みたいなでっかいマスク。
きっと、死体を焼く煙が嫌なんだろう。
気持ちは分かる。
けれど、当事者としては、
ちょっと傷つく。
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あたしが死んじゃったら、お葬式なんか要らない。
みんなのネタなんかにされたくないし。
いいじゃん。もう。
どの議員さんがお葬式に来てくれたって。
「しきび」が何本立っているだとか。
戒名が素晴らしいとか。
棺に彫り物がしてあったり、絹張りだったり、黒檀だったり。
他のお葬式と比べて立派だったとか張り合ったり。
あたし、お葬式って、
みんなが故人を忍んで、悲しむモノだと信じていたのに。
こんなもんなんだ。
ふーん。
こんなもんなんだ。
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理香とおなじぐらいシニカルな親戚がいる。
「お葬式なんかやりたくない」と落ちている理香を見て、彼が呟いた。
「一度、死んだって ｺ ﾄにして、お葬式やってみたら？」
「死んでいる自分を見ながら、
こーゆーひとだった、あーゆーひとだったって、
きっと、あらぬぬれぎぬをかけられまくるんだろうな。
そんな話聞いていたら耐えられないだろうし、
死ぬに死にきれないよ。」
はしゃぎまわっているようにしか見えない親や妹。
スポットライトを浴びたことがないから、
こういう親戚行事で張り切っちゃうんだろうか。
困ったモンだね、イッパンジンは。
「いや、普通の人って言うのは、慣れないことをするとあんなもんだよ。
人が死んじゃってお葬式をやらなきゃならないってコトで、
舞い上がって要るんだろう。」
と、彼が答えた。
それでも、あたしは、嫌。
あんなはしゃぎまわられたら、ホントに耐えられない。
かといって、びーびー泣かれてもちょっと困るけれど。
ああ、やっぱりあたしは、お葬式なんかやりたくない。
どっかで虎に喰われて体そのものがなっちゃったり、
アフリカあたりのサバンナで白骨化していたい。
ああ、そうだ。鳥葬とか。
でなかったら、桜の木の下にこっそり埋まっていたい。
「じゃあ、今いる親戚の誰よりも長生きすればいい」
彼は言った。
そっか。そういう手も残されているのか。
あんまり自信はないけれど。
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うちの母方の家紋はとても変わっている。
家紋帳にも絶対に載っていない家紋だ。
なんでも、一宮という所の、「宮」から来ているらしい。
それが一体「宮司」なのか、それとも皇室系なのかは知らない。
それ故に家紋帳に載っていないのだそうだ。
だから苗字に「宮」が入っていたのか。
なんか、冠婚葬祭って、一族の歴史を確認する旅。
でも、そんなに珍しい家紋が、
垂れ幕にも提灯にも骨壺にも、どこにもかしこにも。
どかんとそびえる「お葬式セット」のあちこちに入っている不思議。
うちにこんなものがあったのだろうか。
いやでもまさか骨壺なんかは業者さんだろう。
というか、位牌っていうの？
あれだって、どう考えても業者さんでしょう？
っていうか、こんなＴＶのセットみたいな大がかさは、
絶対業者さん以外ありえない。
・・・というと、用意されていたんじゃないか！
昨日死んだばかりなのに！！！
用意していたんじゃないか！
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All the birds of the air
Fell a-sighing and a-sobbing,
When they heard the berll toll
For poor Cock Robin.
（02nd Jun. 2006)
