ねえ

ねえ。

どうしてあたしを食べるの？

空を駆ける天使の羽根は、極上の砂糖菓子。
引きずりおろされ、噛みつかれたあたしは、
生きながら腐っていく屍肉。
消化され、やがて私は貴方の一部になっていく。

ねえ。

なんであたしじゃなきゃいけなかったんだろうなあ・・・。

ホントにあたしが食べたかったの？
他の御使いではなく、このあたしを狙ったのは、
あなたの一番近くにいたせいなの？

ねえ。

おいしい？
あたしは、おいしい？

・・・聞くだけ野暮だよね。
アナタが喰らい付いているのは、あたしのイリュージョン。
想像と、思いこみの産物。

あたしの声が聞こえないの？
食べれば食べるほど、もっと欲しくなってしまうのに。
無我夢中に貪り尽くして、血の一滴まで飲み干す内に、
尚一層に飢えを感じてしまう。

そうしてアナタは狂気の縁を滑り落ちていく。
あたしはあなたのポイズン。

ねえ。

あたしが、アナタの手を取って、
この翼で引っ張り上げてあげられると思ったのに。
神さまがお望みにならなかったのか、
それとも、私の鍛え方が足りなかったのか。

あたし、堕ちちゃったよ。

もう、あなたを浄化できない。
もう、あなたを昇華できない。

ねえ。

自分だけが綺麗でいようだなんて思っちゃいない。
そんな虫の良い考えが許されるワケもない。

あたしは、贖罪の子羊になれたのに。
この身と引き替えに救ってあげられると思っていた。

けれど結果は最悪。

あたしは汚辱の縁のひとかたまりの肉塊となって、
いませめてアナタの飢えを満たそう。
それが刹那の幸福であっても、
それが今あたしに出来る精一杯。

ねえ・・・。

（20th July. 2006)