I, and You...

きみとあたしは、丁度ネガとポジ。
一枚の紙を鋏でくりぬいた切り紙細工のように、
ぴったりと反転する。

きみを抜いたあたしと、
あたしから分離させられたきみと。

それは、陰陽のしるしにも似た完全性。
おなじ円の中に存在するのに、常にオポジット・サイド。

光を放つ太陽と、その恵みを受けて闇に一人輝く月。
表に見える表層と、一歩踏み込んだ裏の姿へと変わるとき。
そこが私たちの唯一の共通項。

刹那の交わり。

いつだっけ、こんな昔話を読んだことがある。
昼間だけ人間に変わることが出来る狼の若者と、
夜だけ人間に変わることが出来る白いハトの乙女。
二人がどんなに愛し合っても、決して触れることができない。
そんな物語。

昼が夜へと変わるとき。夜が昼へと変わるとき。
まさに交差するただその一瞬ふれあって、
やがてまた綺麗に分離して、落ち着くべき所に落ち着く。

いや。そうじゃない。
あたしとキミは、交わってすらいないんだろう。

視線を上にあげてみると、
遙か向こうにＺ座標が見えてくる。
頭の中のコンピュータが３Ｄの座標軸を作る。

物質と反物質。
太陽神アポロン、月の猫。
日の光を浴びた瞬間に変身してしまうハトと、
一歩踏み込んだ途端、違う様相を見せる暗い森のように。

一番右端と一番左端は、
往々にして繋がることが多いというけれど、
私たちが描くのは、円じゃない。メビウスの輪。

（10th July. 2006)