帯に短し、たすきに長し

いいことって、ありすぎるとそれが普通になってしまうんだよね。

たとえば、生まれつきすばらしく美しくって、
そのまんまモデルになってしまったような子たちがいる。
理香みたいに努力で頑張っている人間と比べて、それはとてもうらやましいコト。
もっとも、「若くて綺麗ってこわいもんなしなんだなー。やれやれ。」と、
かなりフクザツな気分になることもあるんだけれど。

女の子に仕事を振るとき。
こういっちゃなんだけれど、完全なんてない。
どの子も、多分あたしも含めて、
「帯に短したすきに長し」という状態な気がするんだよね。

若くて可愛くてって子は、苦労も知らないし経験もない。
だから、仕事に対する情熱がなくてなんとなくやってたりする子も多い。
そもそもスカウトとか、他人からの熱心なススメでこのギョウカイにきている子も多く、
自分がどうしてもやりたくて入ったというワケでもないから執着もない。
そりゃあ、有名になれれば嬉しいし、大きなお仕事が出来れば素敵だけれど、
別にそのために頑張ろうなんて思っちゃいない。
第一、仕事何かよりも他に楽しいことがいっぱいある。
ちょっとご飯食べに行ってもタクシー代とか貰えるから、お金にもさほど困らないし。
家族と住んでるコトが多いのものこういう子達の特徴かな。
一人暮らしの子達みたいに恵比寿とか六本木みたいな都心に住んでいるわけじゃないから、
ちょっと家を出るのはおっくうになったりすることも多いってのもある。
こわいもんなしだから平気で仕事ぶっちぎったりするし、遅刻もする。
そんなこんなんの理由で、
クライアント先に持っていけば「いい子が来た」と喜ばれるのは分かるんだけれど、
お仕事をふるほうとしては、非常に扱いづらい事がある。

何か一つ欠陥があったりする子の方が精神的に大人で使いやすい。
というのは理香の自論。

コンプレックスは人の生きるバネになるのだから、
それを克服しようとして頑張るエネルギーはかなりすさまじい。
例えば、歯並びが悪い子は、頑張って歯を矯正したりするでしょ？
「うーん。ちょっとイマイチかわいくないな」「でもバイタリティーはあるんだけれどな」
と思うような子が、案外大化けする可能性を秘めている。
１年後には超輝いているコトだってあるし、
女の子って、ちょっとした工夫でいくらでも綺麗になるモノだから。
髪の色や髪型を変え、化粧やファッションに気を遣い、
ダイエットしたりエステ通ったりして欠点を克服していけば、
驚くぐらい変わっていくんだよね。

理香は、生まれつきカワイイ子じゃないから、
自分で頑張って、歯を治したり、ネイルやファッションに気を遣ったり、
そうやってなんとかモデルとしての「雰囲気」を作ってきているひとだから、
こういう子達の「くやしい！」という気持ちは人一倍分かるよ。
今でも自分はいつも感じているし。

まあ、それはいいとして。

また別のパターンの子もいる。

キャリアがあって売れっ子だと、どこに出しても恥ずかしくないんだけれど、
逆に忙しくてスケジュールがとれなかったり、
金額的に合わなかったりする。
クライアントさんに持っていけば、多分一番説得力もあるし、
一番喜ばれるのは分かっているんだけれど、
お仕事というのは、双方が満足出来ないと契約にならないものだから、
仕事を振る方が気を遣ってしまう。

本当に、「完璧」な人っていないもんだな。
どの人もどの人も、帯に短したすきに長し。

（20th Jan. 2005)