フランス発美肌コンシャス

ある昼下がりに行われた、美容談義の一幕です。
シャンゼリゼ大通りのオープンカフェに集まったのは、
一見４０代の妙齢の三人のフレンチ・マダム。
ひとしきり世間話にふけった後。美容について、話を伺ってみました。

「エステで最近おすすめのところってある？」
「エステ？・・行かないわ。言ったことないし。だって高いじゃない？」
「私も、今までの人生で２回だけ。」
「私もいかない。気持ちいいだろうな。とは思うのよ。
でも、仕事も忙しいし、時間があったら子供と一緒に過ごす方が楽しいもの。」

えっ？
だって、みなさん、どちらかといえば富裕層のゴージャス系マダム。
美容に関心がないとは思えないのだけれど・・・。

「じゃ、コスメ。コスメはどんなブランド使っているの？
一ヶ月にどれぐらいお金をかける？」
「薬局で売っている自然は○▲□という自然派コスメ。
月に１アイテム買うか買わないか。」
「ポイントケアにブランド品も使うけど、化粧水はスーパーで買えるお手頃なものよ。
月４０ユーロ（日本円にして５０００円程）も使わないわ。」
「私は自家製コスメで済ませているわ。
家庭菜園や台所にあるもので、簡単に作れちゃうのよ。」（中略）

「肌の悩みで気になることってないの？」
「えっ？何もないわ」（中略）
みなさん、一様に反応なし。
でも・・・、シミこそそんなには目立ちませんが、あったんです。
くっきりとシワが。目尻にも、額にも、それから口元にも。
気づいているのか、いないのか。
それぞれのお顔にシワは刻まれていたのです。

私はおずおずと、自分の目元を差しながら、
「目尻のシワとか、気にならない？」
勇気を出して聞いてみました。

「いいえ」
「別に。それくらい、年齢を考えれば当たり前でしょ？」（中略）
極めつけに、そえられた言葉は、
「人生には、他に悩まなくてはいけないことって、たくさんあるでしょ？」

私はここに、「女は４０歳からよ」と言ってはばからない、
フランス女性の自信と心意気の源をみたような気がしたのです。（中略）

シミひとつない、シワもない、
１０代の肌に戻りたい・・・そう努力するのが日本女性であれば、
年相応であることに誇りを持っているように感じるのがフランス女性。（中略）
美の先進国と言われるフランスの女性たちは、
いい意味で”エゴイスト”であることを貫いています。
「自分は自分」というオンリーワンの意識が強いので、人と比べることをよしとしません。
よしとしないというか、比べるという意識自体、
ないように感じるほどです。（中略）

私はパリに暮らすようになって、何度、
「日本の女性はみんなきれいだけれど、お人形さんのように見えるわ。」
という言葉を耳にしたことでしょう。
確かに日本女性にはスキがない。
ヘアスタイルから爪の先に至るまで、細部にも手を抜かないのが日本女性です。

完璧主義過ぎるのかもしれません。

肌の悩みや欠点にもストイックすぎるような気がします。
そして自分自身にも厳しい。

（「Dr.MANAの　そんな肌でいいのですか？　フランス発美肌コンシャス」より
岩本麻奈　著）

（08th Jan. 2005)