マンションの怪談

収録が終わっておうちに帰っている最中に、
突然、とん、とん、とん・・・という音が聞こえてきた。

ああ、サッカーの音だ。
誰かが、マンションの壁に向かってサッカーボールを蹴っているのか。

・・・。
・・・・・。
・・・・・・・・・・・？！

ってさぁ、今、夜中１２時だよ？！

そうっと近寄ってみると、
小学生低学年ぐらいの男の子が一人でボールを蹴っている。
とても普通だ。
今が夜中だというコトを除いたら。

これは、一体どういうことなんだろう？

流行のドメスティックバイオレンス？
おうちにいられない事情があるわけ？

明日が大事な試合の日で練習してるのかしら？
・・・っていうか、子供をこんな時間に外に出していて平気なの？

こ、これは、声をかけてあげた方がいいんだろうか？
いやまてよ。
それはお節介？？

そっか、声をかけるとしても、
あたしは彼にとって「知らない人」じゃん？
「知らない人と話しちゃイケマセン」とか言われてるよね、
きっと。昨今の小学生とか幼稚園児なら。

まあ。あたしが女だから、だいじょうぶだとは思うけれど、
これが逆に、女の子が外で遊んでいて、あたしが男だったら、
どう考えても明らかに変質者になっちゃうよなぁ。
っていうか、そう誤解されてしまう。

えー。どうしよう。
でも、明らかに異常なシチュエーションだよね。
ママはどうしたんだろう。
えー、どうしよう。
ちょっとお、だれかぁ！誰もいないの？
誰もこの雰囲気の異常さに気が付かないの？

そ、それとも。イマドキの子供ってこれが普通？？

そういや友だちの幼稚園の子供でも、
夜中の１２時に普通にあたしたちと一緒にお寿司屋さんにいたりする。
あたしは中学校まで、子供というモノは、
夜の８時にはベッドに入るモノだと思っていたのだけれど！
今はそんな牧歌的な雰囲気もないのかしら？？

いっそのこと、彼がふっと消えてくれないかなあ！
これが幽霊だったら心配しなくてもいいのに。
現実は怪談よりも奇なり。

悩みながらおうちに帰ってしまいました。
へーん。だって声かけれなかったんだもん。
へたれ理香です。