得たモノと失ったモノ

マレーシアのまぶしい朝の光の中、
あたしとミキミキは、ホテルのプールサイドで朝食を取っていた。
真冬２月。
なのに、ここは南国。
なんだかとても平和な気がして、とても幸せな気持ちに充たされていた。

考えてみたら、プライベートで旅行なんて滅多にしたことがない。
親の元に帰省する為にドイツに行ったり、
国内なら、おじいちゃまおばあちゃまのお祝いなどで名古屋に行ったりとか、
或いは友達の結婚式が一年ほど前にあって、ハワイにいったっけ。

まあ、でも、どっちにしろ、なんらかの必要性があって、
それでどこかにいく、ということが１００％だったのね。

よく考え見たら、
今回みたいに友達と二人で海外に遊びに行くなんてなかったじゃん！
まあ、今回も、仕事の帰りに他の国に寄っているというだけで、
しかも、「次にマレーシア戦で来る時の為に情報を仕入れておこう」
という目論見があったのだけれど・・・。

そこで、しみじみ考えた。

あたしは、今まで、「仕事が趣味」みたいなものだったから、
仕事は何よりも優先してきた。
仕事をほっぽらかして遊んでいる女の子達を見ると、
「あ〜あ、バカだなあ」と思っていた。
そんなことをしていると、すぐに使って貰えなくなるぞってね。

案の定、みんなすぐに消えていった。

けれど、今、考え見てると、それは「ほらね！」だったのかな？
消えていった子達は、消えたくて消えていったんじゃないのかな？

こうやって遊んでいると、
なんだか、今更なんだけれど、とても楽しい。
仕事ということを忘れて、こうやっていられるのだったら、
それはそれで幸せなことなのかもしれない。

まあ、こういう境地に至ってきたっていうのは、
正直言って、やりつくしたからっていうのはあるだろうけれどね。
まだまだお仕事やりたくてあれもこれも楽しくてって頃だったら、
とてもこんな発想にはならなかったと思う。
暇な時間は、もういてもたってもいられないぐらいで、
１日のスケジュールを、
何か最低一本でもお仕事で埋めないと気が済まなかった。

うん。
最初から遊ぶのが好きな子がいても、
今の自分なら理解出来る。
だって、自分も、今、楽しく遊べているモン。
「お仕事」という片時も忘れなかった肩の荷を降ろして、
リラックスしているもの。

だから、あたしはミキミキに言った。

「ミキミキ、あたしは、今まで、遊んでいる女の子達を見ていて、
『あ〜、なんてバカなんだろう』って思っていたんだよね。
いや、『バカ』ってよりは『勿体ない』かな。
だって、せっかく花の盛りの、
この一番輝いている時期を大事にしないなんて。
遊ぶなんて、年をとってからだって遊べるジャン。
その前に、どうして一生懸命、作れる土台を作っておかないんだろうって。
でも、なんか今、こうやってのんびりしていて、
なんとなく、みんなの気持ちも分かるような気がするんだよね。」

ミキミキは笑って言った。

「そのときの楽しみは大事だよ、理香りん。」ってね。

「働いて、後で楽しむ。それは、確かにそうなんだけれど。
でも、後になったら楽しめないかもしれないじゃん。
お仕事も「その時にしか出来ないお仕事」があるかもしれないけれど、
遊びだって、「その時にしか遊べない遊び」があるんだよ。」

・・・愕然とした。

「あ。そうか。そうなんだ。そうだよね。
『その時にしか遊べない遊び』って、確かにあるんだよね。」

大げさなようだけれど、世界がぐらっとひっくり返った。
パラダイムがシフトした。

そっか、彼女たちは、いろんなモノが欲しいんだ。
仕事も勿論やりたいんだけれど、
けれど、素敵な彼氏を作って、人生を楽しく送りたいし、
結婚だってしたいなって考えちゃう。
あれもこれもやりたいのに、仕事だけに縛られたくないの。

それって、わかる！

そして、それは、なまけものなんじゃないんだ。

お仕事お仕事できちゃった理香は、
今まで一体何を失ってきたんだろう・・・？

（10th Apr. 2006)