エチュード

i-tunesからエンドレスで流れるもの悲しい旋律が、
心の中に沈んでいるいろいろな風景を見せてゆく。

もしかしたらそうじゃないのかな。
記憶を掘り起こしていくという作業ではなくて、
想いが次々と降り積もっていくという方が正しいのかな。

スライドショウを立ち上げた時みたいに、
勝手にフラッシュバックしていく心象風景が、
なんだか気恥ずかしいぐらい妙に美化されてしまっていて。

人の心って移ろいやすいね。
たまに自分の心の中を覗く第三者になってぎょっとすることがある。
変わりたくなんてないのに。
っていうか誰もそんなこと頼んでないじゃん。

一体どうしてこんなことになっちゃうんだろう。

消えていった言葉が私の中でこだまする。
声なき色や形や風景の恨み節が、シュレッダーにかけられたように
断片的な破片になって、白く降り積もっていく。
あたしが早く気がついていれば、きっと形になったのに。
私の怠慢と不注意に壊されてしまった残骸がデータの海に流れて溶けていく。

浸食され、腐食した身体も溶けていく。
どうせこの世の中を構成するのは全て０と１の無機質なデジタル記号。
有機体もバラバラに分解されれば、
プラスとマイナスの電子。

かき集めて再構築出来たら、あたしはきっと素敵な物語を紡ぎ上げるのに。
すくい上げるための柄杓も持っていないの。
吹きすさぶ風に散り去っていく砂粒を目の前に見ているのに、
抑える手段もないの。

（03rd Sept. 2005)