張りつめた糸

ヴァイオリンが、使わないときは弦をゆるめるように、
張りつめている糸はとっても切れやすい。
だから、どうぞ、神経の糸は、
適当なときにゆるめてやってください。

緊張の糸は、張れば張る程、
肉を破る痛みが快感になることもあるんだけれど、
結局は自分にダメージを与えていることに気づいた方がいいよ。

いや、気づかない方がいいのかな。
守りに回ってしまったら、もう君はお仕舞いなのだから、
寧ろ、気づいたとしても、気づかないフリをしてでも、
がむしゃらに立ち向かっていかなければならないのかも知れない。

それも孤独だろうね。
しかもめちゃくちゃ孤独だろうね。

この豊かな現代。
何をそうストイックに生きなければならないんだろう。
ふと疑問がわき上がってきてしまう。
それは誰のため？
多くのファンの為？
それとも自分の為だと言う？

私に出来ることは、ただ祈ることだけかな。
あなたの神経の糸が、最後まで切れないように。

貴方の望みは、きっとどこまでいっても果てしないのだろうけれど。

そう。王冠を手に入れても、
決してそこで終わることがない、残酷な人生。
それでも私たちは、いけるところまでいってみなければならない。
答えは見つかるたびに、よりよい答えが遠くに見えてしまう。

貴方の夢が、貴方が最低限満足いける所までは行き着きますように。
そして、ちゃんと豊かな終わりを迎えることが出来ますように。
私は祈らずにはいられないよ。
貴方のために。そして私のために。

ファウストのように、超自然の存在に果てしない時間を与えられた訳でもなく、
限られたタイムリミットを持つこの経年変化の激しい体を騙しながら、
一生懸命、１日１日を新たに作り出していく苦しみから、
いつか解放される時が来ますように。
「時よ止まれ。おまえは美しい」と、叫ぶことが出来ますように。

（18th Oct. 2005)