エンゼル・ドレス

「これ、何だと思う？」。
小さな洋服と帽子を手に、娘が質問してきた。
「お人形さんの洋服」と答えたら、
「違うよ、エンゼルドレス」
聞き慣れない言葉に説明を求めると、
未熟児で、それもとても小さな赤ちゃんが、
天国に帰るときに着る洋服とのことだった。

服飾の学校で学ぶ娘は、
入院している子供に好きなキャラクターの洋服を作り、
喜ぶ様子を卒論にまとめた。
そのとき協力して下さった大学病院の先生から依頼されて作ったという。

５００グラムの体重で、
一生懸命に生きようと頑張っている赤ちゃんは、
足も腕も細く、
それでも心臓がプクプク動いていた。
その子達に、かわいくてサイズにあった洋服を、と作ったエンゼルドレス。
丈は２５センチ、
クマさんの絵柄にレースがたくさんついて、
帽子とペアだった。

娘が作った洋服を着て天国に向かう赤ちゃんのことを思うと、
子を持つ母として、つらく複雑な思いがする。
ただ、治療するだけではなく、
入院時を一人の人間として尊重し、
丁寧な配慮をしている小児科の先生に出逢ったことは、
娘の今後の歩みに良き指針になるだろう。

つめを虹色に変え、
髪を染めてカラフルな洋服で闊歩している娘だが、
徹夜で作ったエンゼルドレスを１０着ほど持って駅に向かう後ろ姿は、
自立した素敵な女性に見えた。

（神奈川県相模原市　古明地　和子　　主婦・５３歳）

１１月１日「朝日新聞」生活欄「ひととき」より

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ヒトとして、この地球上に生命を授かって、
頑張って生まれてきたのにすぐに儚く死んでしまう命。
一体なんの意味があるんだろう。

前世で、何かつらい目にあって、悲惨な死に方をしてしまって、
もうホントは絶対輪廻転生なんてしたくなくって、
この宇宙のカオスの中に散っていたいのに、
神さまから「また生まれなさい」って言わて、生まれてしまって、
それがイヤで、自分から拒否しているのかなあ・・・。

でも、こうやって、ヒトの優しさに触れることが出来るのならば、
きっと、また生まれてくる勇気が湧いてくるよね。

うん。
人間って、捨てたモンじゃない。
もう一度、ヒトの優しさ、ヒトの善さを信じてみたい。

そう思って欲しい。

小さな命が、天国に帰るときに、
素敵なエンジェルとなって、
幸せ一杯で神さまのみもとにたどり着いたら、
きっと神さまも感動なさるでしょう。

ソドムやゴモラを滅ぼす時も、
世界を洪水で再構築しようとした時も、
良きヒト達は特例措置を出して生き延びさせたのだから。
きっと、ヒトは「良心」と「優しさ」を隣人に持てる限り、
未来は明るい。

そして、「隣人」っていうのは、
小さくて弱い人々なんだよ。
こうやって散ってしまうはかない命みたいなね。

（02nd Nov. 2005)