私は世間を知らないんだそうだ。
なぜかというと、私は苦労をした事がないからなのだそうだ。
例えば、お金のない生活というものを経験した事がないから、
人が・・・しかも友達とか親戚じゃなくて全く関係のない人が、
まったくお金のない人に対してどういう扱いをするかという事を知らない。
だから、無邪気に人を信じていられるんだそうだ。

うん。そうだね。

あたしは、人を信じている。
あたしは、人っていうのは「いいもの」だと思っている。
そりゃあたまには悪い人っていうのもいるけれど、
その人だって、根っから悪い人って訳じゃないと思う。
人は心の中に「倫理観」というのを持っているから、
自分のなりたい人に近づくように振る舞っているだけなのだと思う。

悪い人だって、きっと、好きこのんで人を傷つける訳じゃない。

そういえば、
船の上で嵐が来て怖くなった弟子が寝てるイエスを起こした時に、
「信仰心の薄いものよ」と怒られたエピソードが聖書にあったっけ。
あんまり詳しく覚えてないけれど。
でもね、信じるってそういうものだと思う。

絶対に１００％山を動かせると信じたら、
揺るぎなく信じたら動かせる気がするの。
ただ、人は自分の「常識」に捕らわれすぎているから、
深層心理のどこかで「んな馬鹿な！」と思っちゃうから終わっちゃう。

まあ、この例えに関しては反論もいろいろあるだろうけれど、いいの。
人に不可能はないって思っていた方が、幸せでしょ？

対、物（山）や事象（嵐）に対して信じるよりも、
人を信じる方が、相手が人なだけにやりやすいよね。
現実味がある。

つまり何がいいたいかというと、
人は、自分を１００％信じ切ってすがってくる人をむげには出来ないということ。
友達なら尚更だし、もし友達でなかったにしてもね。
袖すり合うも多生の縁といいますし。

理香は相談をされると断ったりはしない人かもしれない。
まあ、相手の「困り度」にもよってどれだけ助けるかは違うけれどね。
それと、相手の「困っている内容」によっては、
相手が理香に求めていることよりももっと有効な手段があると理香が思った場合、
理香がいいと思った手段の方をお勧めするという事はあるだろうけれど。

そして、きっとそれは理香だけじゃないと思う。

泥棒さんでも、詐欺師さんでも、マフィアさんでも、人の子。
例えば敵は容赦なく殺しちゃっても、
自分の飼っているペットのチワワちゃんにはめろめろだったりするじゃん。
人は人に必要とされてはじめて生に艶（ツヤ）が生まれる。
だから、自分を慕ってくる人はかわいがるというのは自然の摂理なのだよ。

「君は、財布に６０円しか入ってなくて、
それで今日一日喰って行かなきゃならないなんて経験ないでしょ？」

そりゃそうだな。
でも、もしホントに６０円しか持ってなかったら、
あたしは多分面白くてみんなに言ってるかもしれない。
「あたし、今日６０円でサバイバーなんだよ〜」って。

でも、そんなことしたら、きっとみんなが、
「なにやってんの〜。理香ちゃん！」って笑って、
「ご飯ごちそうしたげるよ」って言ってくれそう。

今までの、後輩とかたまたまお金のない友達にご飯ごちそうしてあげたり、
旅行に行けばお土産をみんなに買ってきたり、
いらない水着とかお洋服とかお化粧品とかもらってもらったり、
まあたまたま例がこんなんばっかりだけれど、
金銭的なものだけだけじゃなくて。
「東に病気の人があれば行って介抱してやり・・・。」（BY宮沢賢治）
というような、余計なお節介焼きを重ねてきた日々よ。

そういうものの積み重ねもあるからなのかなぁ。
なんだかわからないけれど理香の友達はみんな
「理香ちゃんにはいつも御世話になっているから」といって、
別にお金に困っているわけではない今現在ですらも
お茶とかご飯とかごちそうしてくれようとする人が多い。
これで万が一にでも理香がお金に困るようなことがあったら・・・。
多分みんな争うように理香によくしてくれそうな気もする。
あたしの周りの友達はみんなそういう風だ。

だとすると、あたしは一生ご縁がないな。
その「お金のない恐怖」っていうのとは。

それは、あたしが「良いリレーションシップ」を持っているってこと！
あたしはみんなを誇りに思っているし、
そんな友達がいるあたし自身を誇りに思っている。

そして、私は、友達を、人を信じちゃってるんだよ。
多分誰からどういわれようが確実に。

「勿論たまにいい人もいるけれど、世間の８０％は悪人だ。」
ですって？！
そんな性悪説は初めて聞いた。

でも、世界の８０％が悪人だなんて！
そんなこといったら太陽が２０％ぐらいしかないような、
まっくらな世界になってしまうよ。
そんな寂しくて、哀しい世界に
あなたはどうして生きていられるの？
あたしだったら寂しくて自殺しちゃう。

でも、幸いな事に、彼は、私と知り合った。
今、こうして話をしている。
だから、もしも、次に何か困った事があったとしたら、
世間はそんなに悪いモンじゃないってきっと分かる事になると思う。
まあ、そこまで理香と仲のいい人じゃないから、
いちいちあたしに連絡してくるかはわかんないな。
結構男の人ってプライドを持っていて、
「武士は喰わねど高楊枝」的ないじらしいところがあるじゃん？
困ったところを人に見せる人かっていうと、
むしろ無理矢理にでも頑張っちゃいそうなタイプではあるけれど。

そうだね。

あたしはただの友達だけれど、
きっと、あなたの８０％の太陽になってあげるよ。
まんまるな太陽に照らされたあったかい世界で、
大きく呼吸をするといい。

いつか分かるよ。
透明な、清らかな愛情に包まれている自分が。
そして、認めるんだよ。
理香が正しかったって。
世界はそんなに悪いモンじゃないって。