耐震偽造問題で考えたこと

世間様の「同情」っていうのは大切だし、世論を味方に付けるのは大事。
イメージを売りにしている職業的に、それはよく分かっているつもりだよ。
「これをしなければ仕事貰えないって言われたんですよ」っていうのは、
同情を誘うのに十分な台詞だね。

マリリンモンローが、
売れない時代にヌードモデルやっていたコトを記者から突っ込まれたときに、
「お金が欲しかったからです」って答えたのを思い出したよ。
姉歯さんの自宅もＴＶニュースで見ると相当ボロボロだしね。
そりゃ仕事やらなきゃダメだろうよ。
最初は「姉歯はヒドイヤツだ！」という論調だったのに、
裏に巨悪がいるという風潮に変わってきたのはこの発言以降なんじゃないの？

そういえばＴＶでコメンテーターが言っていた。
「仕事」っていうスタンスで物事を測る以前に、
良心や善悪で判断してこれはダメと思ったことは断らなきゃ。って。

上からの無茶な命令に従わずに殺された人は歴史上沢山いる。
「殺されちゃ元も子もない」というのは理香の自論なんで、
私にしてみれば「当事者でもないくせに偉そうな机上の論理を振りかざすな」
といったところか。

実際、「そんなんじゃ安全の確保が出来ないので無理です」と
断った設計事務所もあるみたいだけれど、
そういう「仕事を選べる」ような恵まれた人たちばかりじゃないコトも、
世間は経験しているハズなんだろうに。
どうして対岸の火事は見物の対象になってしまうんだろうね。
自分の所が燃えたらそれどころじゃないんだろうに。

無力な存在。

昔なら隠蔽されてしまったかも知れない。
もしかしたら今ですら情報操作されているのかもしれない。
しかし、今なら発表の場はいくらでもあるはず。
こうやってＨＰだってブログだって発表出来るインフラは整っているじゃないか。
それにマスコミにＦＡＸ送ったっていい。
声をあげれば、きっと誰かが気が付いてくれる。
窓は、確実に開かれているし、
「公平であろう」という人の良心が、ワルモノである本人に対しても、
理解しようという気持ちで耳を傾けてくれる。
そんな時代に感謝だね。

それにしても、誰がはじめたんだろうなあ。
その人の良心こそ問いただしたい。
うまく誤魔化して誤魔化してってやっていって、
賢く立ち回ったつもりでも、結局最後にどんびきしてしまう。
「こんなことになるんだったら、やらなきゃよかった」
そう悔やんでも後の祭り。
やるんだったら最初から、効率が上がらなくても愚直にやっていけば、
いつか日の目を見ることだってある。

自分より、下の者だと思って軽んじていると、
いつか後の祭りになっているかもしれないのにね。

（12th Dec. 2005)