人生は、うたかたの夢。
その昔、夢とうつつが同じ次元で同居していた頃、
あの世とこの世は繋がっていたのかも知れない。
煌々と輝ける生命の太陽が、
青白く優しき月に空の支配権を譲る誰そ彼（たそがれ）時、
生者と死者との密やかな会話がなされたのだろう。
いつの頃からか、東西独逸を隔てていた壁よりも遙かに大きな隔たりで
切り裂かれ分断された一つの世界。

だから、私たちは、何も分からない。

人生について。
そして、人の死について。
今という時しか見えない。

街まで世代別で分類されてしまったこのメガロポリス東京で、
私たちは、目に見えないガラスのケージに入れられた鳥。
立ち入るべき区間、降りる駅まで決められてしまい、
交流する人種も全て「想定の範囲内」に収められている。
それは、きちんと収納されたチェスト。
一段一段に分類別に仕分けられた日常生活。
魂は羽ばたけど、空を覆うドームに遮られ、
もう、使者たちと逢うこともない。

敢えて飛ぶものは、「狂気」と呼ばれる。

だって、羽根を切られているんですもの。
やだなあ、飛べるなんて、傲慢だわ。
「風切り羽根」と「飾り羽根」の違いって分かっているのかな。
それでも、挑戦者は後を絶たず、累々たる屍が転がっているのに。
僅かな成功者しか見えないのも、
このマジックミラーの所為なのかしら。

求めているモノさえ見えないのにね。
ただただ、原始の欲求に突き動かされている。
「飛びたい」
その心の声だけを磁石にして、どこかにある隠し扉を探している。
いつかこのパズルを解けると信じている。