美しいせせらぎの清い流れ。
緑あおき山の中で生まれた水は、
一筋の細くつたなき流れとなって、
ここに川が生まれる。

川は、海を最終目標とした長い水の旅。
ゆく川の流れは絶えずして、元の水に非ず。
わき水の汚れ無き清流より、
ありとある芥を集め飲み込む果てしなき海へ。

勢いよく、恐れることを知らず、
どこまでも勢いよく突っ走っていられるのは、
穢れなき若さ故。
或いは、自分自身の存在の軽さ故。
川も又、下るに従って、長き旅路に倦み疲れ、
また自分自身の重さに耐えかね、
緩やかに速度を落としていく。

山中の清き流れも、街に出て、汚辱に汚され、
やがて飲めない水になり、入ってはいけない水になり・・・。
水から生まれた人間、即ち我が子すらからも、
目を背けられ、匂いを誹られ、コンクリートの蓋をかぶせられる。

しかし、細き流れは、支流を集め、
徐々に大きな流れになり、
下流に近づく程にそのボリュームは増大していく。

人の生涯もまた、川の流れに似たるものなのかもしれない。
もはや清くはいられなくなったとしても、
その分の経験と、知識と、たくさんの仲間達と、
自分自身の大きさは、どんどんと広がっておおきくなってゆく。
ゆったりとした流れで、何もかも受け入れられるようになってゆく。

汚れ、疲れ果てた川は、
海という懐に入ってはじめて安息が得られるのかも知れない。
海。それはなんだろう。
もしかしたら大いなる無であり、或いは全てである。

それは「死」なのかな。
だとしたら、死というものは、何も怖いものではないじゃないか。
私たちが全ての意識の集合体と合体するのであれば、
私は全てになり、全ては私になる。

そして・・・。

水蒸気となって昇りゆく私の魂。
いずれ、また、空から新しい命を授かって、
雨の粒として地上に降り注ぐでしょう。
また再び、美しい流れとなって、新しい人生をはじめるために。