絶対、なんてない。
万物は流転するものだから、

「絶対」という単語を正しく使いたいのだったら、一個だけある。
「絶対は絶対無い」というフレーズのみが成立するんじゃないの？
どうも一件矛盾しているようにも感じるのだけれど。

他に使う「絶対」は、
いわば果たされるべき約束の「絶対」。
人が、そう行動することによって、
はじめて後から「絶対だったなあ」と立証される「絶対」であって、
最初からの「絶対」なんてあり得ない。

あるいは、束縛の「絶対」。
自分がこうあろう、こうあるべきだという意志の「絶対」。
これは、時間が流れたりすると、
意志そのものの変化によって容易に変わってしまう。
意志の固さを「絶対」という単語で表し、
自分自身を縛り付けている呪縛。

未来永劫変わらないものなんてないんだけれど、
あたしたちは、変わらないでいたいと願う。
激しい水の流れに逆らって泳ぐ小魚たちのように、
あたしたちは「永遠に変わらない暖かい場所」を求めている。

でも、もしかしたら、あたしたちは、
想い出の中の甘美な世界に逃げることによって、
厳しい現実から逃避しようとしているんじゃないのかしら？

何も変わらないものはすばらしい。
しかし、何も変わらない事はイコール停滞すること。
変化を恐れてはいけないのではないのか？

変わりたい自分と変わりたくない自分が自分の中で戦っている。
変わると言うことに、簡単に適応していく私と、
変わると言うことを極度な緊張を持って拒否する私。
今までの、想いという歴史の積み重ねの中で、
編み上げてきた私だけの繭。
それを壊すつらさ。

でも、きっと、ブレイクスルーしなきゃならない時もあるんだよね。
人生って、いつもこうして、不意に破られる。
その破れた孔を、もう一度丁寧に塗り込めて、
再び暖かい繭の中で眠りにつくのだろうか。
それとも、羽根を生やすために思い切って
風や雨の吹きつける屋外に出ようとするのだろうか。

私は今きっと変化の時を迎えている。
孵化しなければならない卵、胸に抱えて、
戸惑って立ちつくしている。

未来は明るいんだろうか。
それとも、進んだ先には恐ろしい危険が待っていて、
再び血みどろに傷ついて倒れる時が来るのだろうか。
挫折を知らないワケじゃない。
むしろ知りすぎているから、進み出せない。

けど、そんなのは全部言い訳だよね。
せっかく、チャンスの女神が理香の手を取って、
この安穏とした閉塞的な家から連れ出してくれようとしているのに。
あたしは冒険者じゃなかったのか？
あたしはポジティブな人じゃなかったのか？

絶対は、作り上げていくものなんだから。
あたしだけの「絶対」を探してみよう。

よしんば、不首尾に終わったとしても、
それでいいんじゃん？
もともとなかったことなんだから、元に戻っただけ。
例え同じ結果に終わったとしても、
踏み出さなかったよりも、踏み出した経験が、きっと明日の糧になる。

恐れないで。
まっすぐ未来を見て、最初の一歩を刻もう。