人は、きっと自分を変えてくれる人を待っている。

宇宙の始まりのビックバンで、
たくさんの分子がぶつかり合って、四方八方へ飛んでいった。
その時から、きっと神の見えざる手が働いていたんだよ。

分子達は、ビリヤードのボールみたいにぶつかり合っていった。
一個の微粒子がぶつかる度に、次々と運命が変わる不思議。
あたしたちの細胞には、はるか太古の記憶が息づいている。
あたしというちっぽけな人間ががつんと方向を曲げるような、
激しく飛んでいく原動力になるような力を。

貴方に出会えた奇跡。
軌跡を曲げる奇跡。
もう何年も静止している私の
０になった運動量を、１００にするパワー。

ぶつかる激しさに不快が伴う場合もあるけれど、
それは大人だもん、笑い飛ばそう。
それよりも何億年、何百億年経ても変わらない元素たちからみたら
なんて儚い私たちの一生。
どうせ歴史の堆積物になってしまうのならば、
泥のように優しく沈み込む多くの名も無き一粒になるよりも
少しでもあがきたい。
派手な夢がみたい。

だから、変わりたい。
変えていきたい。

それなりにアクティブだった学生時代を経て、
つまらないルーティンワークを避けてこのお仕事を選んだんだけれど、
なんだかね、すっかり落ち着いちゃってる今日この頃。
別に同じオフィスに通っている訳でもないし、
同じお仕事をやってばかりいるわけでもないんだけれど、
代わり映えのしない毎日って、こういうことなんだろうか。
仕事があるかないかわからなかった昔と比べたら、
今のこのどっしりとした安定感は、一体なんなんだろう。
不安定で変化の多い職業を選んだとしても、
喰っていけるようになる事、生活していけるようになることというのは、
即ち落ち着いてしまう事なんだろうか。

いつのまにか守りに入っている私。
体にやわらかな泥をまとって、つもりゆくままにまどろんでいる。

あたしですらこんなんだもの。
もっと安定した職業の人たちは、どんなに危機感を持っているだろうか。
いやいや、積もりすぎた泥の中で、
既に深い眠りに入っているかもしれないぞ。
起きるのが、起こされるのが幸せなのか。
それとも眠ったまま歴史の堆積物になってしまうのが幸せなのか。

でも、人に刻まれた欲求はきっと変化を求めている。
私たちは、自分を変えてくれるものを待っている。