何で子供の頃は、
あんなにも死ぬのが怖かったんだろう。
なんで子供の頃は、
あんなにも死に憧れたんだろう。

きっと、
少年は死して伝説になる。

大きくなって、
やりたいことと、やらなければならないこと。
さまざまな縄で、世界にがっちり結ばれてしまうと、
死ぬ自由さえ残ってない。

あたしはあたしのモノじゃない。
そう知ってしまうから。

そして、不動の姿勢を保っている内に、
苔むし、風化し、錆が浮いて、
時の止まった置物になってしまう。
水気がぬけて、ぱさぱさの流木のように、
倒れ、うち捨てられても、風景にとけ込んでしまう。

いわば、少年の死は、
自然の景色に逆らうものだから。
なまなましく、そこだけが赤黒く、一種異様。
見る人の心に、強く刻み込まれる。

「早すぎた死」というのは、
なんて甘美な言葉なんだろう。
お世辞で添えられる葬儀の儀礼として使われるほど、
心の琴線に触れ、かき鳴らす。

人の生はきっと面白いモノだから、
途中でなげうつのは忍びないのだろう。
それとも、理由のないような死への恐怖というのは、
DNAをこの夜に残せと言う太古の神からのインプリンティング？

少年は、死して伝説になる。
人は、死して、神話になる。

死は、全てを覆い尽くすヴェール。
地を覆う雪。
全てを洗い流す雨。