ハードな日々だね。

パルミジャーノチーズをおろすようにがりがりすり下ろしたあたしを
どうぞ、美味しくお召し上がり下さい。

どうして人間は、かくも寂しい生き物なんだろう。
かくも悲しい生き物なんだろう。
他人を喰う事でしか生き延びられない命が相互の助け合いというのならば、
自己完結が出来るアメーバは高等生物だ。

精神のバランスが崩れるのは、春のせいなのかな。

春憂。
はらはらとこぼれちる花びらが、
目に見えぬひねもすのたりのたりの海を幻のように浮かび上がらせる。

春の日は、なんだかうららかな日差しまでが涙を誘うよう。
あたしは悲しすぎる太陽に分解されて、
ばらばらになっていくような喪失感を感じる。

喪失感ですって？

一体なにを無くすって言うんだろう。
あたしには無くして惜しいモノなんて何一つないのに。

さくらの下には死体が埋まっているんですって。
だから、こんなに真っ白い、綺麗なお花が咲くんだよ。
毒薬を投げ込まれた井戸の如く、
次々と生まれた瞬間からけがされていう原罪を背負った人間に、
美しい白い翼が生えるようだね。
心が震えるような美しい愛情が芽生えるようだね。

プロメテウスの終わり無き絶望の日々を送る人間に、
降り注げ、祝福のやわらかな春よ。
さくらが、我が身を殺して彩ってくれる風のあたたかさに包まれて、
あたしの心は、蝕まれていく。