人は、一つの事をゲットすると、
何か一つの事を失ってしまうのかもしれない。
世界は案外、公平に出来ているもんなんだろう。

いろんなモノを持っている様に見える人はいるんだけれど、
それは多分、持っているものの種類が違うだけで、
実は数は大して変わらないんだよ。

アレもコレもなんて絶対人間無理なんだから。
一個何かを選択したら、知らないうちに多くのモノを捨てているんだよ。

あたしは外交官になりたかった。
で、頑張って勉強して、良い大学に入った。
まあ、結局お家の事情で夢は諦めたんだけれど、
高学歴というキャリアは残った。

学歴はあって邪魔になるモンじゃないね。
だって、普段それを出さなきゃいいだけの話だし。
もしも必要な局面になったときに、
黄門様の印籠みたいに出せばいいんだし。

そう思っていたんだけれど、世間はそうでもないみたいで。

身に付いてしまったモノは、出てきちゃうんだよ。
ちょっとした一言一句に。
ちょっとした立ち居振る舞いに。
そうすると、もうごまかせない。

今まで、綺麗なだけでお馬鹿なレースクイーンだと思っていたのに、
意外や意外、自分よりも高学歴？！
特に男性なんかに、それだけでひかれる。
妙にコンプレックスもたれたり、ライバル視されたり。
ぶっちゃけあんまりいいコトないよね。

叩かれても平気な精神と、
挑まれても勝てる実力と、
ライバル視されても無視出来る性格があれば、
戦場に駆けるジャンヌダルクのように、
男社会を切り開く男勝りの女戦士として戦っていけるかもしれない。

けどねえ。
器と、中身は別なんですよ。
周囲がどう見てるか分からないよ。
あと何を期待しているのか分からないよ。
でも、本人はどう思っているんだろうね。
ホントにそうありたいと思っているだろうか。

いっそ何もなくて「馬鹿でぇす☆」だったらなあ！
男の人から、かわいいかわいいで庇護されて、
ちょっと馬鹿にされながら、ちょっと拗ねながら、ついて行けるのに。
人をいい気分にさせて、代わりにいろいろしてもらえるっていうのが、
人生の極意だとするのならば、
あたしは知らないうちに完全にその権利を捨ててしまっていたんだな。

なんでも、それなりの幸せがあるんです。
お金がないなら、ないなりの幸せがあったりして。
一杯のコーヒーで喫茶店で何時間も過ごしてそれを笑い話にしていたり。
勿論、あればあったで幸せなんだろうけれど。

何か一個、ゲットすると、
何か一個、ううん。それに付随する多くを捨ててしまう。
人生は案外公平に出来ているんだよ。
神の見えざる手が働いているんだよ。