改札をくぐると、折れていた切符が反応しないで挟まれた。
前の席が空いたと思ってすわろうとしたら隣におばあちゃんがいた。
手をあげたら傘を落っことして足にささった。

なんかあたしってタイミング悪い。
大荷物の時に限って、台風なんかがくるし、
お気に入りのジーンズをはいて出た日に限ってワインこぼしたり。
珍しく気合い入れたときに限って、コンタクトが破けてさんざん。

でも、落ち込んだりなんかしないもん。

きっと人生の、幸せと不幸の絶対的な量って決まっているのだから。
晴れている日があれば、雨の日もないとまずい。
「雨」は理香にとっては憂鬱だけれど、
他の人にとっては「恵みの雨」でもあるのだから、
きっとあたしにとって「不幸」だなあと思っていやんなっちゃうコトも
人生のどこかで本当の真価が問われるような、
必要性があってやってくるに違いない。

そういえば、すっごいラッキーな時って、
大きな不幸に足をすくわれがちだと思いませんか？
順風満帆に見えるときでも、
どうも心のどこかにある不安がぬぐい去れず、
ラッキーからラッキーへ綱渡りしているような錯覚を覚えたりしませんか？

そう考えると、こんな小さな不幸や
タイミングの悪さでちょこちょこ不幸をすり減らしていった方が、
なんだか安心な気がする。

そういえば、大地震なんかも、
小さな地震がちょこちょこきているうちは来ないって言うモンね。
微震が止まってしまうと、どっかーんって来るんだって。

だから、むしろ小さな不幸を喜ぼう。

こんなことで気分を害していたら、多分理香は不幸になってしまう。
本当の不幸って自分で作り出すものなんだから。
それに、気分悪くしていると、周りの人間まで不幸にしてしまうね。