メモランのあぶく

散らばっちゃったぐらいだったら
そのかけらを集めて回ることが出来るんだけれどさ
完全に消失しちゃうんだよ。
この世から。

アルファベットが２６文字、
日本語が５０音。
まあ、濁音とか「っ」とかあるけれど、
たかがこれだけの組み合わせで、
結構感動的な文章とか感動的な物語とか
出来ちゃったりするわけじゃん。
すごいよね。
うん。すごいよ。

だから分解しちゃうと、とりかえしが付かないんだ。
集めても、もう意味を成さないの。

次々と泡ブクみたいに
ぷくぷく言葉がわき上がってくるのに
全部それが海の外に出るときに消えちゃうんだよ。
その時にぱんって音がするかもしれないけれど、
そのままなんの痕跡も残さずに消えてしまう。
それが勿体ない。

何が一番情けないかというかというと、
気持ちだよ、気持ち。
気持ちを忘れちゃうんだよ。

そんときにはすごい感動したこととか
すごい思いつきとかいろいろあるじゃん

でもそのままだとあっという間に忘れちゃうから、
そういうのを一生懸命書き留めておくジャン。
あたしは最近忘れないように書き留めておくようにするのね。

で、手帳にすごい全部が全部書いておくの。
細かく書いておくことがあるのね。
全部が全部、
その時思ったことを一言一句間違わないように
細かーく写し取っておくの。

そういうのはすっごくいい感じなの。
そのまま書き写すだけでも一個メモランが出来ちゃうぐらい。

読んでいるとまざまざと思い出すの。
その時に何を想ったのか。
その時の鮮やかな心の動きとか、
ちょっとしたみずみずしい感動とか。

でもその時に例えば時間がなかったりして
とりあえず出だしだけだとか、とりあえず一個二個とか、
ポイントポイントとか書き留めておくの。
そうすると間間が抜け落ちるわけ。

そうするともうだめ。
骨髄が抜けたさらされた白骨みたいな残骸になっちゃって、
もうもとのＤＮＡは残ってないんだよ。
だから復元が出来ないの。

そんな白骨だけいくら並べてみたところで、
リアリティーに欠けるの。
ああなんか机上の空論だなって思っちゃう。
あたしこんなの書きたかったんじゃないし
あたしこんなことが言いたかった訳じゃない。

だから勿体なくてしょうがない。
せっかくいろんなアイディアがぽこぽこ浮かんでくるのに。

キーワード○○にして覚えておこうと思っていても
大抵忘れちゃうのね、９９％。
例え残りの１％で覚えていたとしても、
すぐに色あせるの。
まるで押し花みたいな感じ。
それがとっても嫌。

なんてあたし勿体ないコトしているんだろう。

だって人生なんてどのぐらい生きられるかわかんないジャン。
その短い人生で悟ったことをどんどん忘れちゃうの。

それを全部書き留めていけたら
壮大な叙事詩が生まれたかもしれないのに！
人の一生を彩るに足る作品が残せたかもしれないのに！

よどみなく生まれてくる泉のような頭に甘えて、
メモランのかけらをこれ以上無くさないように、
大事に拾い集めて行かなきゃ。