Overheat

いつもフルスロットル。
だから余計な負荷がかかってくると、
簡単に壊れてしまう。

貴方は言ったね。
そこらへんでちょっと改造した市販車が
３００キロぐらいでも故障無く公道走れるのに、
メーカーが気合い入れて作っているＧＴカーが、
どうして、あんなに短いレースで壊れるの？って。

だって、特殊だもの。

異常なまでのテンション。
精神力、テクニック、体力を総動員して、
１００％を出し尽くし続けるからなんじゃないのかな。

気合いの糸が切れそうになるコトもある。
ルーティーンワークに少しの増量ですら、
キレそうになるマシンを騙し騙し転がして走る。
こんなところでマシントラブル起こしてる場合じゃない。
あたしにはやらなきゃならないことが
まだこんなに残ってるんだから。

焦りと、いらだちが添加剤。
一気に踏み込んで、加速する。
ボディーがきしむのも構わずに。

たまにオーバーヒート。
きっとこれは知恵熱。
エンジンが強制的にストップするのは、
もしかしたら自己防衛本能なのかもしれないね。

動けない自分を、歯がみしながら見てる。
半ば諦めの漂う目で。

一体ゴールなんてあるのかな。
希望だけで突っ走るのも
そろそろネタ切れなんだよな。

でもリタイヤするには早すぎる。
６０歳が定年退職だとするのならば、
まだあたしたちはスタートに立ったばっかりなんだから。
こんなとこで諦めちゃダメ。
グランドスタンドからのブーイングが聞こえてきそうじゃない？

でも、たまにはピットストップしてもいいよね。
へたったタイヤを替えて貰って、給油をして。
壊れかけたマシンをガムテで留めて貰ってもいいんだし。

ホーム。
そう。あたしたちはきっと一人では走れない。