存在理由

あたしが生きているのが偶然でないとしたら。
あたしの生きている理由が何かあるとしたら。
大いなる宇宙の摂理の中で、
あたしの存在に何か意味があるのだとしたら。

一体それはなんなんだろう。

あたしが生きていると言うよりも、
何かによって生かされている。
その前に何かによって生み出されている。
そう考え見ると、
見慣れた世界もなんかこう
違ったふうに見えてきたりする。

あたしがこの世界に対して何か出来ることがあるならば。
あたしは幸せをもたらしたいな。

手に秤を持った冷酷な「ジャッジメント（正義）」のカードではなく
或いは剣と盾を持つ戦いの女神アルテミスでもなく、
両手を広げた無原罪のマリアのように。

勧善懲悪。
そんなもんじゃないんだ。
悪いことをしている人たちだって、救われるはず。
例えば悪徳商法で儲けていたとしても、
例えばそれは愛する彼女を幸せにしてあげたいからだったとしたら、
それは許されてもいいような気がする。
・・・少なくとも、あたしは許してしまうだろうな。

一生懸命。
そう、一生懸命な人に、救いはあるべきなんだよ。

あたしは、長いといえば長い、
短いと言えば短い人生を通して、
一種のあきらめを覚えてしまった。

一生懸命やっているからといって、
それが世間様に認められるかというとそうではない。
野を駆けずり回って獲物を探したからといって、
必ず肉を持って帰れるという保障はない。
いくら弓矢の練習をしたからといって、
いくら足を棒にして頑張ったからといって、
幸せになれるという保障は、はっきりいってないのね。

寧ろ、この世は「運」や「タイミング」が全てであって、
さぼって寝ていたって、
ウサギが勝手に走ってきて木の根に躓いて転ぶ場合もある。
たまたま通りかかった手押し車から、
でっかいしゃけがころんと転がってくることだってある。

あたしたちの努力なんて、
成功の保障になんてならないんだよ。
ただ、成功の「確率」を、
ほんの数パーセントあげる事が出来るだけ。

ただ、それでも、
頑張って努力している人たちがいるんだ。
黙ってはおれないひとたち。
努力をしないではおれないひとたち。

でもって理香は、
そんな人たちが、とても愛おしいと思うんだな。

正義か悪かなんて話じゃなくて、
自分で進む道ならば、まっすぐ進むべきだと思う。
そして、その人には、天の助けがあるべきだと思う。
幸せになるべきだと思う。

あたしが将来何になれるかわかんないけれど、
一体どこまで出来るのかわかんないけれど、
あたしはそういう人たちを、
高く評価したいな。
そして、どこまでできるかわかんないけれど、
自分で出来る限りの利便をはかってあげたいと思う。

もしもあたしが万能の女神だったならば、
間違いなく幸せにしてあげられるのにね。

そう、きっと、
これがあたしの使命。
この世に生まれた存在理由。

人類の良心。
堕落へ転がり落ちないためのストッパー。