我レハ　レースクイーン

どうしてこんなにウケが悪い職業なんだろうなあ。
レースクイーンというモノは。

とりあえず男には引かれれてしまうし、
イロモノみたいな目で見られるし、
中には「親の敵」みたいな厳しい目を向ける人たちがいる。
「へえ・・・」と間の抜けたつなぎ言葉を口にしながら、
誉めたらいいのか、貶したらいいのか分からなくて、
中途半端なうすら笑いを浮かべてる口元。

あたしが「レースクイーン」だと分かった途端に、
みなさんが取る態度って、一体なんなんですか。

さすがにマンツーマンでお会いした時に尚、非道い事言う人は、
オトナですからね、最近大分減りましたが、
それでも結構失礼なこと言われることが多いですし。

更に言ってしまうと、
「レースクイーンなんぞちやほやしてやるかよ」ぐらいに
プライドをかけて刃を向けてくる人には閉口しますね。

一体どこから
「レースクイーン＝ちやほやされる」なんて構図や、
「レースクイーン＝わがままで高飛車」なんて構図が出てくるのか、
世間を知らない私としては本当に驚く事が多いです。

第一、レースクイーンに限らず、
若くて多少なりとも綺麗な子はちやほやされるものだし、
わがままで高飛車なものですよ。
だのに、うちらはあらかじめそういう色眼鏡で見られているから、
ちょっと何か言うと「ほらね！」みたいに言われてしまう。
地味なご職業の方のほうがよっぽど、人前ではおとなしそうでいて
実はプライベートで仲良くなってみるとものすごーくわがまま、
なんて方が多いように思うのですが、どう思われますか？

まったく神経がすり減りますね。

更に、「俺が言ってやるんだ」ぐらいの、
どこから出てくるんだか分からない正義感。
アレ、迷惑です。

っていうか、貴方に言われなくても、
オーディションだのなんだので辛い思いを十分してます。
オーディションなんてどうせ審査員の好みとはいえ、
何度も立て続けに落ちたらさすがに精神的にもへこみますし、
一体どこが悪かったんだろうと真剣に悩みます。
第一、経済的なダメージも同時に被っているし、
一個一個の単価が嘘みたいに高くても、所詮日雇い労働者。
なかなか大変な仕事なのですよ。
まあヘンに同情されるのもやなんですけれどね。

仕事関係者だって、自分を認めてくれて、
かわいがってくれる人ばかりでもないのです。
ホントに意地が悪い人もいるし、
ねちねちいびられることだってあるし、
無理な要求を強要されることだってあります。
相手の気持ちを傷つけないで、かといって自我を曲げず、
安売りをせず、誠実にやってるんです。

その上、ファンの心はふわふわしています。
どんなにいいこといってくれたって、
新しいお気に入りがでたりするとそっちに走っていきます。
いつのまにか古いファンが去っていったりもします。
勿論新しいファンの方もたくさんきてくれますが、
虚しくなることもありますよね。
新人の頃は夢をもって一生懸命ＢＢＳにカキコしてた子が、
そのうち放置状態になる気持ちもよく分かります。
私も一時期そうだったし。
あたしの貴重な時間を、こんな儚いモノに割いてていいのかしら？
そういう絶望的な気持ちになることもあるのです。
ナニゲに傷つきやすいんですよ、こういう子達は。

友達だって、離れていく子は離れていきます。
「あたしとは住む世界が違うね」なんて言いながらね。
・・・多分その人は自分の言葉の「本当の意味」というものを
全く理解していないのでしょうが。

逆に、「レースクイーン」という職業がよくて、
「レースクイーンと友達になった！」という事で友達になりたがる子もいます。
いわゆる「ミーハー」というものでしかないのですが、
でも、それでも声かけてくれる人が嬉しかったりする。
ぺらぺらな愛でも、砂漠の水みたいに感じることがあるんです。
なかなか孤独な世界ですね。

そんな私たちに、どうしてそんなに鋭い刃を向けるんですか？

お陰様で、大分世間に対して殻を作るようになりました。
敬語バリバリの慇懃無礼な接し方も板に付いてきました。

天皇陛下のマネじゃないですけれど、
「自分の意志」を表明できないんですよ。
結果的に自分にとってマイナスですから。
心で怒っていても、にこやかに対処する術を身につけました。
まあ「オトナ」になったんでしょうかね。

まあ、偽悪的な私としては、
そんな目を向けられるのも決して嫌いじゃないんですが☆。
というより寧ろ、そのギャップを楽しむ自分でありたいですね。
理想としては。

どうせあたしが親の会社継いだら、
あなた達は私に全く違う顔を向けるんでしょ？

だって、今だって、あたし、十分経験してるもの。
あたしと話しをしているうちに、
実は、貴方より遙かにお勉強が出来て、
遙かに偏差値の高い一流大学を卒業してるって分かった途端に、
まるで自分の同志のような顔をして握手を求めるじゃない？
「君は違う！」って。

そしていうの。
「どうして・・・って、失礼ですけれど、
どうしてそんなお仕事なさってるんですか？」って。
『そんなお仕事』、ですか。
これは、あたしが命かけている稼業ですが、何か？

だから、私には見えるの。
今貴方が私に向ける見下したようなバカにしたような態度。
それが、数年後には、こびへつらい、へえと感動したような声を出し、
きっと「社長、ひとつ宜しくお願いします」と頭を下げるんでしょ？
そんな時にあたしはどんな態度をとったらいいんだろうね。

・・・でもいいよ。あたしはオトナだから。
昔の遺恨を盾に、うだうだ言うような愚痴っぽいことはしないから。
ただ一人で心の中だけで傷ついているから。

しかし、それにしても、レースクイーンの地位の低さよ！

これは、やっぱり露出が多いからなんだろうかなあ。

内容的には決してバカに出来ないような、
かなりのハードさと人間性とを求められるお仕事なんだけどね。
現場での臨機応変な対応ができなきゃならないし。
クライアントさんに失礼のなく、かといっておとなしくてもダメ。
頭は回転が速くないとダメだけれど、
明らかな論理矛盾にも耐えられる神経の太さも持ち合わせていないと。
求められる資質は、相当大きいと思うんだよね。

私たちキャンギャルは、
企業の看板をしょって立つ「イメージ」なのです。
もう少し意識が高くてもいいんじゃないのかな。

何が一番いやかというと、
やっぱりレースクイーン本人が
レースクイーンであることを隠すこと。

確かに楽なんだよね。
同じ人間なのに、職業をちょっと
「フリーター」だの「学生」だの言った方が、
世間の目がぐっと優しくなる。
或いはまだ「モデル」って言った方がウケがいいね。
へんなの。

モデルなんて「自称」でもなれるのに、
企業のお墨付きである「レースクイーン」が攻撃対象なんてさ。
別に威張る訳じゃないけれど、更に言うと、
ＧＴの「年間ＲＱ」クラスだと、人数制限もあるし、
本当に選ばれた人間しかなれないのに。

理香は悔しい。

だから、職業欄には必ず「レースクイーン」って書くようにしてる。
だって、あたしはレースクイーンだもん☆。
モデルでもないし、フリーターでもないし、自営業でもない。
あと、名刺にもちゃんと「レースクイーン」って入れてる。

あたしはこの職業に自信と誇りを持っているから。
他のどの職業と比べても、恥じ入ることなどない、
素晴らしい仕事だと思っているから。
人になんて思われても良い。
あたしはマイナスイメージを跳ね返して、
人の持つ「レースクイーン」というイメージに含まれる
悪いモノを払拭することが出来る人だと信じているから。

私は胸を張って声高に言うよ。
あたしの職業はレースクイーンです。って。
だから、私と接した人たちからまず意識を変えて欲しい。

余談ながら・・・。

あたしには、そういう熱い思いがあって、
声高に言っているんだけれど、
たまに「自慢してる」みたいに取る人がいるのは困りモンだけれどね。
自慢の鼻をへし折ってやろうぐらいのイキオイで、
私の職業をけなす人もいますけれどね。
そんな浅い話じゃないんです。

いばってもいません。誇りは持ってるけれどね。
だって、その名前がどれだけ迫害受けるか身に滲みて知っているのに、
お気楽に、威張れないでしょう。
黄門様の御印籠とも思っていません。