宝物殿

いつのまにか、楽な方に流れている事に気が付く時がある。

日常生活を送っていて、ふと気が付くと、
自分の周りには「心地いい人」しかいなくなっている。
というか、「心地いい人」しか置きたくなくなっている。

好きな人で周囲を固めてしまいたい。

それはとっても良いことだと思います。
ストレスを感じないで済むというのは、
現代社会を生きる上で大きなメリットになりうるし、
人の一生って言うのは、言うなれば、
「自分の大好きな宝物を集めた自分の城を築くこと」に他ならないわけで、
早い内に基盤が築けたらそれはそれで素晴らしいことです。

でもね、
その中で安穏としちゃうと、成長がないよね。

幸いなことに、理香のお仕事はルーティンワークではありません。
毎日違うところに行って、毎日違う人たちと仕事をします。
しかも下手したら一日に何現場もあったりします。
その度に、何度も違う世界と、違う文化にふれあうことが出来ます。

クライアントさんには、固い大企業さんがあります。
逆に一代で巨万の富を築いた実力系社長さんもいます。
長者番付に載るような人とも逢うけれど、
詐欺師みたいに人から僅かなお金を掠め取って生きている人もいます。
地方出身者がいます。
理香のような海外出身者もいます。
まるでハリーポッターに出てくる「名前を呼んではならないあの人」のように、
職業名を伏せて語られるような方達もいます。
昨日威勢の良かった人が、今日はいなくなっています。
甘い蜜を吸うために偉い人に寄生している人がいます。

本当におもしろいです。

まあ、これだけいろんな人がいると、
勿論いい人ばかりじゃないし、というかぶっちゃけ、
割合的には理香たちにとっては何らかの意味で「悪い人」が８割だと思うし、
相当フリクションを感じてしまいます。
ストレスで胃が痛くなることもあるし、
眠れない夜を過ごさなければならない日もあります。

でもね。楽しいんです。
とっても刺激的なんです。

何よりも自分が成長できているのが嬉しいのです。

もしもあたしがダイアモンドだったとしても、
磨かなければただの石。
例えダイアモンドの原石であったとしても、
誰も欲しがらないでしょう。

この世界は、すごい研磨力で私を磨き上げ
素晴らしい光を発する宝石を作り出す。
他を圧倒するようなまばゆさは、それだけヘビーな環境の所為。

プライベートだと、わがままばかり言っていても、
お仕事だとなるべく自我を滅して頑張ろうと努力する。
それが良いんだと思う。
自分にとってなによりも。

それに、自分が光を放ち、
魅力的になればなるほど、魅力的な人が集まってくる。
そうすると、結果的に、
自分のお城に素晴らしい宝物が集まってくる。
そして私の一生を豊かにしてくれるのだ。

若いときの苦労は買ってでもしろと言います。
それは、結局こういうことなのかもしれないね。