アーティフィッシャル・ライフ
いつのまにか
帰りがけにスーパーによって、水を一本買うのが習慣になった。
朝ご飯はてのひら一杯のビタミン剤。
パソコンデスクの上には、
なぜか酸素ボンベが常駐している。
あたしは一体どんな国に生活しているんだろう。
空気も水も、食べ物さえもアーティフィシャル。
エベレストや北極だって、もう少しはネイチャーに近そうだな。
眠りに入る前には、眠るためのおくすり。
目覚めたときには、目覚めたときのおくすり。
水分その他を体内から排出させるためのおくすり。
生理を規則正しくするためのおくすり。
リラックスさせるためのおくすり。
心臓をばくばくさせる為のおくすり。
食欲を出すためのおくすりと、
痩せるためのおくすり。
それから、
おくすりを飲むためのおくすり。
おくすりは良くないんだって。
でも、普通のたべものはもっとよくないんだって。
綺麗に洗ってあっても、
遺伝子を組み換えたりしていたら危ないんだって。
だから、おくすりを飲むんだよ。
あたしはロボットなのかもしれないな。
何一つ自分で出来ないロボット。
例えそれが人間として、いや動物として、
生きとし生けるもの全てが無意識に出来るような事でも、
そう、例え生理現象であっても、
全て外部の力がなくては何も出来ないあたし。
（でも、なにもあたしに限ったことじゃないよねえ？）
環境が同じであれば、多分火星でも生きていける。
けれど、もしライフラインを絶たれたら
東京のど真ん中で速攻のたれ死にしそう。
水道水のお風呂に入っただけで、
なんとなく自分が汚染されたような錯覚。
これって、やっぱ、強迫観念？
あたし、電車のつり革は意外と平気なんだけれどなあ。
とりあえず薔薇の入浴剤で誤魔化しておきましょう。
そういえば、清潔ぶる人が多い昨今。
どうして平然とディープキスができるんでしょう？
他人が触ったモノですらいやがる人が、
他人の舌をなめるなんて、ねえ。
・・・虫酸が走る。
外気温３７度とニュースが伝えても、
薄いワンピースの下には耐火服の様な補正下着。
それでもなかなか汗をかけないから、
エステと、プラセンタと、フィットネスで、
無理矢理流す汗。
汗をかかないのは、モデルとしての資質としては
すばらしい美徳なのだそうだ。
でもさ、汗をかかない人って早くふけるんだよね。
人間ってそうしたモノじゃん。
それとも、命短し、の方がやっぱりかっこいいのかな。
肉食獣みたいなガイジン女性は、かなり野性的。
サバンナでテント張っても生活できそう。
その強さにあこがれつつも、
虚弱な理香としては無菌室の病院のベッドの方が似合いそう。
なんてね。
やっぱおかしいのかな？
それともあたしが「普通」なのかな？
そんな日常。
（12th July. 2004）
